震災から2か月後の5月15日、同市のグリーンピア三陸みやこ敷地内の一角にテントで善助屋食堂を再開させた。メニューに選んだのは震災前に完成した「どんこ唐揚げ丼」(税込み880円)だ。
“どんこ”とはエゾイソアイナメという地元ではなじみの魚。みそ汁や鍋、焼いて食べるのが一般的だが、赤沼さんはから揚げにした。
「震災前、三陸鉄道から“駅-1グルメ”のひとつとして地元の食材を使って何か作ってくれないか、と持ちかけられたのがきっかけでした」
当時、田老地区の商店街は客足が減り、閑散としていた。地元を盛り上げるために考案したメニューだった。
甘辛い味がついたフリッタータイプの衣の中にはふわふわとした食感のどんこ。くさみはなく、上品な味わいの白身。青じそ風味のタレが食欲をそそり、揚げ物が苦手な人でもペロリと食べられる。
「テントで店を再開した初日はすごい人でした。みんな喜んで食べてくれました」
同年9月には仮設店舗で、そして’16年11月には現在の場所に店を再建した。
しかし、店を続けるか、やめるかでずっと悩んできた。
「復興工事が終わったら客足が途絶えるのではないかと今も不安です。でも、お客さんから力をもらっているから、みんなが来てくれるから私は店をやれる。頑張れる」
うわさを聞き、地元はもちろん全国各地、海外からも観光客が訪れるという。今後、期待するのは田老地区を訪れてくれる人が増えることだ。
「バックはできないから前に進まなきゃいけない。『どんこ唐揚げ丼』は今年で9年目。まだまだ泳ぎ続けますよ」
どんこに地域の未来を託す。
《INFORMATION》
岩手県宮古市田老2-5-1 0193(87)2054
営業時間:昼・午前11時半~午後3時
夜・午後5時半~午後8時
水曜、日曜夜は定休