「埼玉県に対する関心を高めていただける大きなチャンスととらえています。多くのみなさんが埼玉を訪れて、魅力あふれる“本当の埼玉”を体感していただくことを期待しています」(埼玉県庁観光課)
二階堂ふみとGACKTのW主演で、埼玉県を過激にディスるコメディー映画『翔んで埼玉』の大ヒットに、埼玉県も大喜び。だが、同県内では、笑っていられない“争い”が起きているという。
「大宮は浦和の植民地のようなもの。もう離婚しかない!」
こう叫ぶのは、大宮派の吉田一郎さいたま市議会議員だ。
明治2年、廃藩置県が行われ、現在の埼玉県の南部に『大宮県』が誕生していたが、
「その8か月後に『浦和県』と名を変えられて、県庁を持っていかれてしまいました。大宮の郷土史に詳しい人によると、浦和の有力者が明治政府に強烈に働きかけたんです」(吉田議員)
このときから、大宮と浦和のディスり合いが始まった。明治9年、現在の埼玉県が誕生するのだが、県庁のある浦和はいわば“県の顔”。そのため、浦和には多くの税金が使われて発展していったが、大宮はどんどん寂れて、人口が1000人をきってしまう。
「明治16年に高崎線ができたが、大宮は人口が少ないから駅もつくってもらえなかった。大宮は本当に没落したんです」(吉田議員、以下同)
だが、初代大宮町長が自分の土地を鉄道会社に寄付して大宮駅をつくったという。
「大宮は“官はアテにできない”と、“民の力”だけで街を発展させてきた。それに比べて、浦和は役人頼み。役所があれば、“えこひいき”されて栄えますからね」
『さいたま市』が誕生すると市が浦和を“えこひいき”
時は流れて、’01年。大宮市、浦和市、与野市が合併し、’05 年には岩槻市も加わって『さいたま市』が誕生した。すると、今度は市が浦和への“えこひいき”を始めてしまう。
「さいたま市の最初の市長は旧浦和市長でした。だから、市役所も浦和に置かれて、次は“市の顔”にもなった。だから、浦和のことばかりにお金をかけるんです!」
2月7日の本議会で吉田議員が’18 年度までの旧4都市別の都市開発予算を質問したところ、浦和1400億円に対して大宮858億円という格差が明らかに。
「合併から18年もたっちゃったんだから、そりゃ格差が出ますよ。浦和は『中央図書館』など公共施設も充実しているし、浦和駅東口には『パルコ』ができるし。さらに浦和駅に『湘南新宿ライン』を通す高架化費用も市がお金を出しているんですよ」
“税収は浦和より大宮のほうが多い”と、息巻く。
「大宮の税金が浦和に使われちゃっている。大宮の人はそれをわかっているから、ライバル視するんです。浦和の人は気にもしていない」
そこには、地理的な問題が関係しているという。
「大宮の住民は電車で東京に出る際、必ず浦和の駅を通らなければならない。変わっていく浦和の様子を毎日見ているんです。浦和の住民は大宮を通らずに東京に行けるから、地域格差を感じていない」