キャバ嬢やAV女優のイメージが激変
2002年、鈴木さんは慶應義塾大学に現役合格する。そのころ、女子大生のバイト先としてブームになりつつあったのはキャバクラ嬢だった。実際に勤めるとまではいかないまでも、体験入店を繰り返し、1日で1万5000~2万円を稼ぐだけの女性もいた。
「女子高生ブームとキャバ嬢ブームは時代的にほぼ連続しています。特に、女子高生時代にブルセラなどで気軽に稼いだ子たちのニーズに合ったのは、体験入店。ドレスは借りられるし、ヘルプなのでお客との携帯番号の交換も不要。体入荒らしと呼ばれる女性もいた」
鈴木さんも、大学に通う傍ら、キャバクラやAVなど夜の業界をうろうろする女子大生として過ごした。
平成が終わろうとしている今、キャバ嬢やAV女優に世間が向ける眼差しの変化を感じている、と鈴木さんは言う。
とりわけ'05年創刊のファッション誌『小悪魔ageha』の存在は大きい。ギャルブームを再燃させ、キャバ嬢のスタイルとイメージをも変えた。
「いまのキャバ嬢は服がロングからミニドレスになって、メイクも控えめ。異世界というより普通の女の子のイメージ。インスタでも圧倒的に女子のフォロワーが多くて、ファッションリーダーになっています。以前はあくまで稼ぐ手段だったのに、最近では中学時代から憧れの職業だったとか、お母さんが応援して店に送ってくれるという話も」
AV女優も同様で、紗倉まなや明日花キララなど、テレビ出演したり、作家業に進出したりするなど、AVの枠を超えた人気を誇る女優たちの活躍も目立つ。
だが一方で、こんな懸念も抱いている。
「ブルセラだって、みんなが店に行ってコミュニケーションをしなくちゃいけないし、店のオジサンとも話さなくちゃいけないし、うまくやっていこうと社会を学びました(笑)。
ところが今はネットを使えば個人売買が可能になったし、パパ活はアプリに登録するだけでできる個人売春みたい。ここ20年でデリヘルの数は飛躍的に増え、デリヘル嬢は自宅と派遣先の送迎をしてもらい、会うのはお客さんとドライバーだけに。どれもコミュニティーを壊す流れですよね」
かつての女子高生には、渋谷という街と、ギャル同士のつながりという味方があった。
「風俗業界で女同士の友達ができないと、なにか困ったときに相談したり、助け合える人がいない。夜の女の子たちが孤立する問題は深まるばかりです」
《PROFILE》
鈴木涼美さん ◎1983年生まれ。作家・社会学者。慶應義塾大学、東京大学大学院卒で元キャバ嬢、元AV女優、元日経新聞記者という異色の履歴。著書に『オンナの値段』(講談社)ほか