児相が「いらない」理由

 まず、第一に、児相の職員がプロフェッショナルではないことを挙げる。

児相の職員は県の職員で、以前は土木関連に携わっていたような職員が、たらい回し的に就いている。児相の職員で最も多いのが児童福祉司ですが、わずかな期間、研修を受けただけでその職に就く。なんら特別なトレーニングもなしにね。つまり、その道の専門家とは言いがたい」(水岡教授)

 児童福祉司は、経験年数が3年に満たない人がおよそ45パーセントを占めているといわれている。要するに経験不足で、プロと呼べるシロモノではないというのだ。

 第二に、日本は25年前、国連の子どもの権利条約を批准していると同教授は指摘する。児相はその国連の子どもの権利委員会から2010年と、今年の2回にわたって厳しい勧告を受けているが、改善しようとしていないと教授は話す。

「厚労省は児童虐待防止法(以下、児虐法)を何度も改正して児相の力を強化してきました。国連はそれを4回も実地調査して、多くの子どもたちが家族から引き離され、親の同意もなく家庭裁判所の許可がなくても最大2か月間も収容されていることを問題視しています。明確な保護基準を設定し、司法検査を導入することも必要。そうした仕組みは虐待の抑止にもなるんですが、まったくそうしようとしていないのが実態です」(同)

 児相そのものが、子どもの人権蹂躙(じゅうりん)をしていると教授は明言する。

児相はいわば“子ども収容所”。そこでは暴言、暴力、虐待、わいせつな行為などが横行していて、家庭で虐待を受けていた子どもたちが被害に遭っているんです。乱暴に言えば、児相職員が子どもたちを拉致して強引に入所させている。国連は、児相で人権侵害があり、一時保護を閉鎖しろとも言っているんですけどね」(同)

児相が存続する裏にある「児相利権」

 なぜ、そこまでひどいことをしていながら、児相が存続しているかというと、そこには「児相利権」ともいうべき、厚生労働省の権益があると教授は言及する。

「終戦時は戦災孤児、浮浪児が多かった。その子たちの先行きが危ぶまれるだけではなく、治安的にもよくなかった。そういう時代に児童福祉法ができて、子どもたちを収容するシステムができたんですね」(同)

 ところが、時を経るにつれて、そんな子どもも次第にいなくなり、高度経済成長期になると、施設は閑古鳥が鳴くようになったという。1970年代になると、英国でサッチャー首相が登場し、福祉を削減して小さな政府を目指す動きが出た。日本でも’80年代になると、臨調(臨時行政調査会)で行革の時代に突入した。

「そこで省益を失いたくない厚労省は児童虐待といった部分に注目し、省益確保、成長分野として児相を拡大しはじめた。養護施設などからの突き上げで“子どもを回してくれ”という要求が児相に殺到したこともあってね。それで児虐法をつくった。これは児相の所長が意のままに子どもを拉致してしまうもので、国家的な誘拐です」(同)