貧困により希望が損なわれていく
内田さんのような不登校経験者は増加傾向にある。文科省の調査('17年度)によれば、全国の小中学生で不登校を経験した児童・生徒は14万4031人と過去最高を更新、高校では4万9643人にのぼる。
内田さんの場合、不登校から社会への不安が広がり、困っているのに身動きができない。一方、「ネットで簡単に情報が得られるせいなのか、既存の情報にとらわれて、自ら動こうとしない子どもが増えています」と前出・黒沢さん。行動は、自ら考え、試行錯誤することでもある。
「困窮世帯の子どもたちは“貧乏だからやりたいことができない”と、あきらめ続けた結果“最初から考えないようにしよう、希望を持たないようにしよう”と思うに至る。部活もお金がかかるから、やりたいだなんて思わない。かつては地域でフォローできる子どもたちもいましたが、いまは社会に余裕がなく難しい」(黒沢さん、以下同)
ただ、教育格差に至る原因は何であれ、行動を促すきっかけと周囲の理解があれば、それを乗り越えることも可能だ。
「協会で働く人のなかに、大学院を中退し、3年間、ひきこもっていた男性がいます。週5日も働けないし、朝は頭が痛いという。そこで、きついなら来なくてもいいと伝え、会計ソフトを教えて、自宅のパソコンで入力作業をしてもらっています。ただし、連絡をするというルールは守ってもらう。雇う側が環境を整えることで、他人や社会と関係を結び直せたのです」
格差の時代をどう生き抜けばいいのか。
「住まいと食が保障されれば、安心・安全は満たされる。教育無償化も必要。これは国や行政がやるべきです。子どもたちには、人に話をしたり聞いてもらいに行くことをすすめます。思いを言語化できるからです」
まずは失敗を恐れずに一歩を踏み出すことだ。行動範囲を広げていけば、未来を考えることもできる。
(取材・文/ジャーナリスト 渋井哲也)