荒波と逆風の途切れなかった平成に、ロスジェネの非正規女性は道を失い続けた。

「先日、(社会学者の)貴戸理恵さんが『現代思想』('19年2月号)に、こんなことを書いていたんです。

 いちばん働きたかったときに働くことから遠ざけられて、いちばん結婚したかったときに異性とつがいになるにはあまりにも傷つき疲れ果てていて、いちばん出産に適していたときに妊娠したら生活が破綻すると怯えた、それがロスジェネだ、と─。まさにそのとおりだな、と思いましたね

先行き不安でも生き延びるためには

 上の世代に押しつけられたのは「どうせいつか結婚するんだから、女は補助的な仕事でいい、非正規でいい」(雨宮さん)という価値観。これが社会に根を張り、家庭でも幅をきかせていると話す。そのため、都会で暮らす娘に、介護要員としてUターンを促す親たちが後を絶たない。

やっぱり介護の問題は大きい。時間もお金もとられるし、介護離職だけはしないように、というのが非正規女子の間でかけ声になっています。そもそも家の中で女性が担ってきた仕事って、賃金が安いですよね。介護もそうだし、保育もそう。これらの収入が(全産業平均に比べて月額)10万円くらい低いことは、“しょせん、女の仕事”という世間の考えを象徴している」

 平成から令和にかわっても先行きは不透明なまま。それでも、生き延びなければならない。

「役所にただ行くだけでは何も教えてくれないし、この制度を申請します、と言わないとアドバイスもしてくれない場合が多々ある。比較的、元気なうちに生きられるように手を打つことです。

 まず困ったときに頼れる支援団体、失業保険とか生活保護に詳しい法律家や相談先を知っておくこと。それから個人年金に入るとか、老後はシェアハウスで助け合って生きるとか。死なない方法がひととおりわかっていると、かなりラクかな

 賃金などの格差解消はもちろんだが、住宅ローンが組めず、クレジットカードも作れないといった雇用形態によって生じる社会的不利をなくすことも必要だろう。

「死なない方法って、つまり生存権で、本来は国が保障すること。それを個々人でやらないといけない。厳しい時代に生きているんだと思います」