被害直後の胸は“証拠保存”
事件が起こったのは、その日の午後だった。右胸の乳腺腫瘍摘出手術を終えた純子さんは、病室のベッドの左側に回ってきた医師に不信感を抱いたという。
「なんで左側に来るんだろうって。手術をしたのは右胸だから右側に来るものじゃないですか? それに左側はスペースが狭いのに、わざわざ狭いほうに来るのは不自然です。それと右胸だけを出して診察すればいいのになぜか左胸もあらわにされたんです。
不思議に思っていたら胸を舐めだして。でも、おかしいと思われるかもしれませんが、あまりにびっくりして最初は“治療の一環なのかな”と思ってしまったんです。先生を信じていたし、そんなことをすると思いたくなかった」
純子さんと佐田医師は約6年間、主治医と患者の関係だったという。また、過去にも同様の手術を執刀してもらっていたことから信用しきっていた。
「でも、やっぱりおかしいと思ってナースコールを何回も何回も押したんです。押したときにわかったのですが、音は出ず点滅するタイプだったので、なかなか看護師さんが来ないこともあって、何度もボタンを押しました。やっと看護師さんが来たら佐田先生は逃げるように去っていきました」
裁判でも純子さんは《左胸の乳首や乳輪のあたりを吸い尽くすように舐めたり吸われたりした。よだれとかもべちょべちょで、すごく気持ち悪かった》などと証言している。
その後、病室に戻ってきた佐田医師は純子さんの母親がいたにもかかわらず、「傷口をみるから」と言って、母親を病室から追い出し、1度目と同じ場所に行って、純子さんの胸を見ながら自慰行為のような動作を始めたという。純子さんが会社の上司に送ったLINEが残っている。
3時12分 《たすけあつ》《て》《いますぐきて》
3時21分《先生にいたずらされた》《こわい》
「看護師やもうひとりの執刀医に訴えましたが鼻で笑われて相手にもされませんでした。佐田医師が舐めた私の左胸を看護師がふこうとしたため、それを拒否しました。気持ち悪いけれど舐められた胸を証拠として保存しました」
純子さんの上司は110番通報した。駆けつけた警察官が左乳首の付着物を採取したところ、1・612ナノグラムの佐田医師の唾液が検出された。これは会話などによる飛沫量の4000~4万倍にあたるとする法廷証言があった。
同年8月25日、事件から約3か月半後に佐田医師は逮捕され、9月14日に起訴された。すぐに病院側がホームページで「不当逮捕」と主張し始め、純子さんを苦しめた。
「はなから私をせん妄状態だと決めつけて嘘つき呼ばわりしました。それと私は芸能活動をしていることも一切、医師に話していないんです。起訴の段階で、私は会社員と表記されていましたし、私の職業と事件とは関係ないはずです。でも、なぜかすぐにネット上で私の個人情報が流れました」