撮影に顔を出すと、リリーさんがエキストラの方々に、「この話、脚本家さんの実話で、俺はその嫌な夫を演じてるんだよ」と私を紹介してくれました。当然、エキストラの方々の目が点になり、「ボヘミアン・ラプソティみたいなもんですよ」とフォローしたけど、全員ポカンとしてました。
またリリーさんに、「このドラマを奥さんに見てもらって、なんとか離婚を回避できればいいと思っていたけど、間に合いませんでしたね(笑)」とあのいい声で言われるたび、お酒をおごってもらうことにしています。
思い出に残っていることはたくさんありますが、ひとつ挙げると、
撮影が終わったころ、大八監督から、リリーさんと小林さんが演じた野田夫婦を俺たちで接待しませんか? とメールがあり、4人で食事会をしたことです。リリーさんと大八監督が私より一つ年上、聡美さんが一個下なので、同じ高校の先輩後輩が集まったような楽しいひとときでした。
『世の中の出来事を「好奇心」で楽しいに変換する仕事』
というのが放送作家としてのモットーで、この物語を書き始めることができました。
そして多くの人に支えられてできたドラマです。
この場を借りて、ドラマ化を提案してくれたテレビ朝日・奥川晃弘さん、脚本の背中を押してくれたテレビ朝日・服部宣之さん、愛のあるダメ出しをくれた吉田大八監督、演じてくださったリリー・フランキーさん、小林聡美さん、岡田将生さんはじめ俳優、スタッフのみなさまに感謝を述べたいと思います。
『ジュ・テーム・モア・ノン・プリュ』を聴きながら
<プロフィール>
樋口卓治(ひぐち・たくじ)
古舘プロジェクト所属。『中居正広の金曜のスマイルたちへ』『ぴったんこカン・カン』『Qさま!!』『池上彰のニュースそうだったのか!!』『日本人のおなまえっ!』などのバラエティー番組を手がける。また小説『ボクの妻と結婚してください。』を上梓し、2016年に織田裕二主演で映画化された。著書に『もう一度、お父さんと呼んでくれ。』『続・ボクの妻と結婚してください。』。最新刊は『ファミリーラブストーリー』(講談社文庫)。