読者の皆さんにはあまり感情的にならずに読んでいただきたいのですが、大組織においては上層部が隠蔽という対応を取ることは、事柄の大小などに応じてケースバイケースですが一般的には「あり」なことでもあります。
企業でも政府でも現実社会は隠しごとだらけです。これは組織防衛論の基本で事件が当事者の間で穏便に解決されるのであればそれをなかったことにするという対応は、有能な管理者であればあるほど巧みに処理するものなのです。
AKSの場合の問題は、前支配人はその点で有能ではなかったということでしょう。相手によって巧みに言葉を変えてことをおさめようとしたのでしょうが、結果を悪化させて事件を露見させてしまいました。
では、事件が発覚してしまったときにはどう対応するのが組織防衛論的に正しいのでしょうか。
正しいプロセスとしてはスケープゴート(いけにえ)を用意して迅速に処断することです。もしAKSがもう少し腹黒い組織であったならば、前支配人と一部の関係者に責任を押し付ける形で厳しく処分していたはずです。そうしていれば、そこで組織は防衛されたはずです。
こう書くことでたぶん多くの読者は気分を悪くされたのではないかと思います。別にこうしたらいいという話をしているのではありません。そうではなく「世の中の腹黒い組織では日常的にこういった組織防衛がなされている」という話を紹介しているのです。そこは誤解しないでいただけたらと思います。
「腹黒くなりきれなかった」ことで状況を悪化
ところが今回の問題の本質は「藪の中」なのです。迅速に誰かに責任をおしつけて処分するということは、山口真帆さんではない別の誰かについて、事実をきちんと確認せずにその夢を奪うという処分になりかねません。
そこまで悪になりきれなかったというのがAKS上層部の対応のぐだぐだの原因だと私は見ています。悪い言い方をすれば「腹黒くなりきれなかった」ことで状況を悪化させました。
それで第三者委員会です。双方へのヒアリングも十分にできないまま事件が解明されたとはいえないという報告書を提出し、それを受けて運営側が「結局細部はわからないので処分はしません。心機一転再スタートしますのでよろしくお願いします」とやったのが、前回のぐだぐだ記者会見以降の顛末でした。
ここまでのプロセスとしては0点とは言えませんが、40~50点と言うところでしょう。しかしそれで引き起こされた結果は、前述のとおり0点。いまや問題はNGT48ではなくAKSの吉成夏子社長と松村匠取締役に着火しています。言い換えるとAKB48、HKT48を含むグループ全体に火が広がっているのです。