難関の初期クラス突破で道が開ける

 ばら教室の目的は、公立小中学校へ通う前に、希望する外国籍の児童・生徒を対象に、学校教育に必要な、初歩的な日本語と生活指導を行うことだ。

 定員は35人。5月現在は30人がブラジル籍、5人がフィリピン籍。日本語の習熟度別に6クラスに分かれている。毎月、教室を修了する子どもがおり、在籍している小中学校へ戻る。5月は12人が教室での学びを終える予定だ。定員に空きが出ると、随時、待機者が教室に入ってくる。

可児市の「ばら教室KANI」は日本語の習熟度別に全6クラスで構成
可児市の「ばら教室KANI」は日本語の習熟度別に全6クラスで構成
【写真】『ばら教室KANI』で熱心に学ぶ子どもたちの様子

「小2から中3が対象です。小1の場合、学校に慣れるのは日本の子どもと一緒。これまでの可児市での経験では、スタートが同じほうが壁は低いとわかっています」(若原室長、以下同)

 朝の会は全員で行う。忘れ物の検査をしたり、歌を歌いながら九九を唱えたりする。まだ日本語で言えない子どもがいれば、指導員が近づき、一緒に唱える。鉛筆のチェックも行う。

「海外では、日直が出欠を確認したり、家で鉛筆を削る習慣がないようです」

 1時間目の授業は「日本語」。初期クラスは平仮名のカードを使って、発音と、その言葉を使った単語を覚える。最上位のクラスでは、過去形を使いながら、前日に食べた給食に関する文章を考えていた。

「いちばん難しいのは、初期のクラス。非常に労力がいります。この教室を経れば、日本の高校へ進学する道が開かれます。なかには、言葉が頭に入っていかないと本人も苦しみ、地域のブラジル人学校へ転出する子どももいます」

 小島准教授は、外国籍の子どもたちが、日本の公立学校で学ぶことが選択肢のひとつとしてあることが大切だと指摘する。

「当初は小学生だった人たちも、いまは成人して、就職して、正社員になっている人もいます。納税者となり、家族となり、市内で生活しています。ブラジル国籍ですが、可児市で生まれ、育ち、“可児市が地元”と言う人もいる。彼らが自ら進路を決めて生きる力をつけられる環境が重要です」

 ばら教室を5月に修了予定の中学1年生、富永ミカエラさん(12)は1歳のときにブラジルから訪れた。

「日本語を学ぶのは楽しい。中学校ではバレーボールをしたい。将来は、人の世話をするのが好きだから、お医者さんになりたい」

 同じくブラジル出身の小学3年生のガルシアよしおくん(8)は、「日本語は難しいけれど、学校へ行く楽しみは友達と遊ぶこと。将来は(ポルトガル代表の)クリスティアーノ・ロナウドのようなサッカー選手になりたい」と教えてくれた。