「ただ、説得する内容だったり、自分の価値観を押しつけるような手紙はむしろ関係を悪化させることもあります。手紙以外にも日ごろからあいさつをしたり、何かしてもらったら“ありがとう”と言うことが大切です。見返りを期待せず、無視されるかもしれないけど続ける。
家族がしんどくなってきたら、そういうときこそ家族会や地域の施設で同じ苦しみを持つ人と意見交換したり、愚痴を言ったりするといい」
恩田さんも手紙でのコミュニケーションはオーソドックスな手法としつつ、
「コミュニケーションを通してひきこもりが解決することもあるので、手紙のやりとりというのは一定の効果はあると思います」
手紙という手段よりも内容を気にしたほうがいいかもしれない。
本人に言ってはいけないNGワードは
「常識だったり、正論だったり、指導、安直な励まし、一般論、非難、思い込み、子ども扱いなどはよくありません。要するに自分の価値観の押しつけのような発言ですね。子どもを心配しているようで、実は自分を安心させたくて出る発言です」(前出・深谷さん)
親が干渉しすぎるのもよくないというのは恩田さん。
「親は親の人生を楽しんでいるのを子どもに見せるのはいいと思います。親は親、子は子です。ひきこもり当事者は自分のせいで親は困っていると思いがちです。自らにプレッシャーをかけているところにさらにかけたらしんどい思いをするに決まっています」
心配のしすぎや価値観の押しつけは当事者へのプレッシャーになってしまう。
軽い暴力程度ならば家族は耐えたほうがいいのか
「暴力というのは相手がいるとエスカレートします。なので暴力が始まったらとにかく逃げることが大切です。暴言でも耐えられないのであれば逃げてください。場合によっては警察を呼んでもいいと思っています。暴力は悪いことですから、家庭の中だけで解決しようとするとエスカレートすることもあります。
ひきこもりに限ったことではありませんが、親子関係が悪い場合、親が老いていくと関係性が逆転して、親への恨みつらみを暴力という形で表すケースもある」と深谷さん。
ひきこもり状態に対して、どう向き合うかが大切だとして深谷さんが続ける。
「ひきこもり当事者が暴力行為をはたらくのは極めてまれです。ただ、最後の力を振り絞って歪んだ形で訴えてしまうケースもあります。今回の事件は何が原因だったのかはわかりませんが、そこまで追い詰められていったものは何だったのか。われわれは検証して繰り返さないようにしないといけないと思っています」
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両氏とも、個々のケースによって解決策は異なるとしながら、問題意識を共有できるように一例を示してくれたものなので誤解のないように。ひきこもりの相談窓口は各都道府県にあるひきこもり地域支援センターまで。
連絡先リストを掲載した厚生労働省のHPは、
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/
・特定非営利活動(NPO)法人『KHJ全国ひきこもり家族会連合会』のHPは
・一般社団法人『ひきこもりUX会議』のHPは