そもそも、なぜ消費税の引き上げが必要なのか? 国は「財政健全化と全世代型社会保障の実現」を理由に上げる。

消費税を社会保障のために使うというのは詭弁です。社会保障は税金で支えるイメージかもしれませんが、実際には、財源の6割が社会保険料でまかなわれています。厚生年金と健康保険の負担は労使折半が原則なのに、消費税を払うのは消費者だけ。しかも増税分は大企業や富裕層の減税に向けられています。

 '05年度には30%だった法人税率は'17年度には23・4%に。その結果、いまでは446兆円もの内部留保を抱え込み、なおかつ減税まで受けているありさま。スウェーデンでは社会保険料の個人負担率が日本の半分で、企業負担は日本の2倍です。日本でも同じようにするか法人税率を元に戻せば、消費税は下げられます」

“借金大国ニッポン”は嘘

 日本は借金大国で、少子高齢化により社会保障費が逼迫し、消費税を引き上げなければ国の財政が破綻する……。消費税をめぐる議論では、こんな話をよく耳にするものだが、森永さんは「真っ赤な嘘です。みんな財務省にダマされています」とバッサリ。

 例えば、国債の金利。信用度に応じて金利が決まるのは国債でも同じ。そのため財政破綻したギリシャでは国債に40%の金利がついた時期もあった。現在、日本国債はマイナス金利で、これは健全財政の証だと森永さんは言う。

「日本政府は、表向きは1469兆円もの借金をしていますが、一方で986兆円の資産を持っています。つまり借金と預金を両建てしているような状態。資産から負債を差し引くと、483兆円のマイナスに。ただし'16年度のGDPは538兆円なので、国が抱える本当の借金はGDPの9割程度になります。これは欧米とほぼ同水準で、借金大国ではなく、普通です」

 財政状況が普通なのに、どうして日本の国債は世界一低金利なのか? それには、こんな仕掛けがあるという。

「いまの日本では、日銀が国債を買い入れて、その代金として日本銀行券を支払っている状況。これを金融緩和と言います。この経済政策を安倍首相はとてつもない規模でやりました。国債を持っている国民には金利を支払い、10年たてば元本も返済しなければいけませんが、国債を日銀券にすり替えた瞬間に利払いや元本返済の必要がなくなる。つまり政府の借金が消えてしまうというわけです

 この「消える借金」の累積は現在、450兆円ほどにのぼるという。前述した国の実質的な負債483兆円と相殺すれば借金は33兆円になる。

「無借金と言ってもさしつかえのない状態。消える借金を経済用語で通貨発行益と言いますが、これを考慮すれば、日本の財政は健全で、消費税を上げる必要はまったくない。廃止したところで実は何の問題もありません」


《PROFILE》
森永卓郎さん 経済アナリスト、獨協大学教授。三和総合研究所(現・三菱東京UFJリサーチ&コンサルティング)などを経て現職。各メディアで活躍中