月9枠は今後どうなっていくのか
月日は流れ、「山口智子再び月9の大舞台にカムバック!」ーーというわけではないというのが成馬さんの分析。今回の出演も、“月9女優の復帰”ではなく“力のある女優”として呼ばれた可能性のほうが高いとか。
「結婚してブランクがあるかのように思われがちですが、是枝裕和監督の『ゴーイング マイ ホーム』(2012年)、大根仁監督の『ハロー張りネズミ』(2017年)の演技も素晴らしかったですし、宮崎駿監督のアニメ映画『崖の上のポニョ』(2008年)の声優も素晴らしかったです。最近では、朝ドラの『なつぞら』にも出演しているので、“カムバック”という感じではないと思っています」
では、山口智子と木村拓哉、月9トップスターが同枠で共演する可能性についてはというと、「すでにテレビ朝日で放送された『BG~身辺警護人~』で離婚した奥さん役で共演しているので、難しいのでは?」というお見立て。
ファンならぜひとも期待したいが、月9自体がここ数年パッとしないという点はドラマ好きにとって寂しいところ。しかし、ここに来て復調の兆しがあるのだとか。現に『監察医 朝顔』の第1話は視聴率13.7%という好発進だった。
「近年の月9は、医者や弁護士を主人公にした職業ドラマに舵(かじ)を切ったことで、視聴率が10%を超えるようになってきました。ただ、それと引き換えに、かつてあった“月9らしさ”はなくなってしまったように思います。テレビ朝日の刑事モノや医療モノのドラマを見ている感覚に近く、破綻がなくて安心して楽しめるのですが、野島伸司や北川悦吏子がオリジナリティーの高い作品を書いていた時代に比べると、近作は脚本の“作家性”が薄く感じますね」
総論として「せっかく視聴率が回復し視聴者の注目が集まっているので、そろそろ“脚本家の顔”がはっきりとわかる、月9ならではの作品が見たい」と成馬さん。
あの手この手でテレビ業界はテコ入れを図っている最中、ありし日の“国民的ドラマ”はなかなか生まれにくいご時世でもある。新鮮な気持ちで見られるドラマ作品が、ドラマの王様枠である月9から再び登場することを期待したい!
<今回のセキララアナリスト>
成馬零一さん
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。テレビドラマの評論を中心に、マンガやアニメ、映画、アイドルなどについて幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生 テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。サイゾーウーマン、リアルサウンド、LoGIRLなどのWEBサイトでドラマ評を連載中。
<文/雛菊あんじ>