音楽系サブスクの登場で変わったのは、曲の購入の仕方だけではない。音楽の聴き方にも変化が生まれ始めている。それを象徴するのが、“プレイリスト文化”だ。
音楽生活が豊かになる「プレイリスト」
「数千万曲が聴き放題となると、最初はどれを選べばよいか迷う場面も出てきます。そのときに役立つのが、プレイリストと呼ばれる機能です。
このサービスは、人工知能や音楽のエキスパートによって、曲やアーティスト別、もしくはテーマごとに音楽リストを提案してくれるんです。これによって、聴き込むほどに学習し、自分の趣味嗜好に沿ったさまざまな曲が提案されるので、自分で曲を探す手間も省けるのが大きなメリットです」
また、プレイリストを使えば、音楽との新たな出会いの機会も増やせる。
「年を重ねる中で、どうしても音楽の趣味は固定化しやすい傾向にあります。“日本では35歳を過ぎると音楽離れを起こしやすい”なんて話もあるくらい。
プレイリストを使うと、1曲が終わるとまた次のおすすめ曲が提案されていくので、どんどん新しい音楽と触れることができます。忘れかけていた青春時代の懐かしの曲に再会できるなんてことも。音楽生活をもう1度、豊かにしてくれる役割にもなるんです」
'18年5月にMr.ChildrenがApple Musicで全作品の配信を開始したことが話題を集めるなど、昨今は大物アーティストが音楽系サブスクに注目する流れもある。
「ほかにも、松任谷由実や宇多田ヒカルなどの大物アーティストがサブスクに楽曲を出すようになってきました。計算したらだいたい750万人くらいが定額制配信の有料会員といわれていて、来年には1000万人を超えると予想されるほどマーケットはいま広がっています。
もちろん、CDはなくなることはないでしょうけど、こういった音楽を聴くスタイルが今後も広まっていくだろうと思います。サブスクの登場によって、いつでもどこでもさまざまな曲を聴けることから欧米では“音楽天国”という言葉も生まれましたが、日本も間もなく似た状況に追いつくはずです」
《PROFILE》
榎本幹朗さん ◎作家、音楽配信の専門家。エンターテイメント系の新規事業やメディア系のコンサルティングを中心に活躍