世界で活躍する日本の芸能人といえば、まずビートたけし。ほか渡辺謙や千葉真一、真田広之、菊地凛子ら役者の名が挙がることが多い。ではコメディアンはどうか。

 サイレントコメディーデュオのが~まるちょば(現在はメンバーのHIRO-PONがひとりで活動)や、スタンダップコメディアンのRio Koike(小池良介)などはいるが、日本で活躍した経歴がある芸人のくくりならぜんじろう、パフォーマンスでは電撃ネットワークあたりか。つまり女芸人はほぼ進出できてないのが現状だ。

 そんななか6月に放送されたアメリカのオーディション番組『アメリカズ・ゴッド・タレント』でゆりやんレトリィバァが話題になったのは画期的だった。本人もさまざまなインタビューで「海外進出をしたい」と語っているが、今後、海外進出は可能なのか。アメリカのお笑い事情を紹介しながら分析する。

アメリカの主流は“スタンダップコメディ”

 アメリカで昨今、有名なコメディアンはそのほとんどがスタンダップコメディアンだ(この稿では敢えてコメディエンヌという言葉を使わない)。スタンダップコメディとは、基本一人でステージに立ち、観客に向かって次々とジョークを浴びせていくスタイルの笑い。最近ではトランプ批判ネタが流行。そういった政治批判や下ネタ、そして人種差別ジョークなどキワキワのラインを攻めているのが特徴だ。

 有名どころではスカーレット・ヨハンソンとの交際も話題になったコリン・ジョストや、自身が受けた差別体験を笑いにするインド系アメリカ人アジズ・アンサリ。日本のしゃべくり芸人のようなケヴィン・ハートらがいる。 

 女性も多い。アカデミー賞助演女優賞も受賞したメリッサ・マッカーシーも元スタンダップコメディアン。トランプ政権のホワイトハウス報道官を務めたショーン・スパイサーのモノマネをテレビで披露し、世界中で大絶賛。ケイト・マッキノンはヒラリー・クリントンら女性政治家やセレブのパロディで有名に。レズビアンであることも公表した。

 ほか韓国系のマーガレット・チョウも象徴的。欧米のアジア人差別を逆手にとった笑いが得意で、例えばアジア人女性と西洋人カップルをネタにし、「すごくキレイなアジア人女性がしょぼい西洋人の男と歩いてるのを見ると、『あんたの目はそこまで小さい(見えない)わけ?』って思う」などの自虐ネタを見せている。ちなみに彼女はバイセクシャルだそうだ。