経済はさらに弱体化
アベノミクス3本の矢は、(1)日銀が日本株式や国債を大量購入して市場にお金をばらまく量的緩和を行い、(2)デフレ脱却を目指して公共投資などの財政出動で景気を保ちつつ、その間に、(3)経済構造の改革を行うとの計画だった。
「痛みを伴う構造改革への批判が大きくなると、いつしか安倍総理は、構造改革自体を言わなくなってしまった。さらに財務省が、これ以上お金は出せないと強く言い出して、財政出動もなくなった。結局やったのは量的緩和だけで、あとは実現できないまま。すべて実行していれば、それなりの効果はあったかもしれませんが、いまとなっては手遅れです」(加谷さん)
マイナス要素ばかりが並ぶいま、ここで消費税10%をぶつけたら、何が起きるのか。
加谷さんは「消費者心理が冷え込んで買い控えが起きます。経済がさらに弱体化するのは、ほぼ確実。GDPの数字は来年前半でかなり悪くなるでしょう」と見通す。
増税を待つまでもなく庶民の財布のヒモは固い。経済アナリストのあんびるえつこさんは「消費税が上がると何度もアナウンスした効果が大きい」と話し、こう続ける。
「エコノミストの間で、明治安田生命の夏休みに関するアンケートが話題になりました。夏休みに使うお金が前年比1万5743円減と調査開始以来、最低で、節約志向が極まった内容だったからです。今回の増税は2%で、軽減税率もあるし、たいしたインパクトを与えないんじゃないかと言われていますが実際は消費者心理に影響が出ています」
実際、過去2度の増税後、経済成長率はいずれもマイナスとなっていた。森永さんは大不況への懸念を隠さない。
「'14年には消費税率を3%引き上げて、消費がきれいに3%落ちました。今回も同様に落ち込むと思います。すると、ほぼ間違いなくマイナス成長になる。日本の景気は急速に悪化していくでしょう。世界経済も影響して、リーマン級や、それを超えるような不況も十分、起こりうる」
リーマンショックのあと、景気悪化から非正規労働者のクビ切りが相次ぎ、年越し派遣村がつくられたことを覚えている人も多いだろう。
「不況で庶民にいちばん影響が大きいのは雇用です。人手不足だと言われているのに、わずかとはいえ、すでに大卒の求人倍率は昨年を下回っています。転職したい人は早めに決めたほうがいいし、非正規の人は、正社員の口があるならできるだけ早くなっておいたほうがいい。安倍政権になってから非正規の割合は上がり続けていますが、その傾向に、さらに拍車がかかるでしょう」(森永さん)