世間の一般的な「結婚」の概念からすると、うちの結婚スタイルは異色だと思う。何しろ夫がゲイで、私たち夫婦の間に性的交渉は一切ないからだ。
結婚した'97年当初は雑誌に「偽装結婚」などと書かれたし、周りの友人知人も「どうせ長続きしないでしょ」と思っていたようだ。
というか私自身、長続きさせる気もなかった。すでにバツイチだった私は結婚に対して夢なんか持ってなかったし、「一生添い遂げるなんて無理でしょ」と考えていたのだ。
「結婚すればいいんですね!」と激怒
なら、なぜ結婚したのかというと、香港人の夫が日本に在留できるようにと思ったからである。夫(その当時はまだ夫じゃなくて親友だったのだけど)は学生ビザで日本に留学していたのだが、卒業と同時に学生ビザは失効するわけで、続けて滞在するためにはワーキングビザを取得しなければならない。
だが日本で職を探したものの見つからず、途方に暮れた彼から相談を受けた私は一緒に入国管理局に行くことにした。その時点では、彼との結婚なんてまったく考えてなかった。
ところが、だ。その入国管理局のおっさんの態度があまりに横柄で、私はすっかり驚いてしまったのだ。おっさんは薄笑いを浮かべながら「一流の料理人とか有名人とかならともかく、何の取り柄も才能もない外国人に職なんかあるわけないし、ビザもあげられないねぇ」と偉そうに言い放ったのである。
タメ口で、しかもめちゃくちゃ上から目線で。私は「このおっさんは自分に何か特別な権力があるとでも思ってるのか?」とあきれ果てた。
で、「じゃあ、どうすれば日本に滞在できるんですか?」と尋ねたら、おっさんは肩をすくめ「誰か日本人の女の人に結婚してもらうしかないんじゃない?」と答える。その小バカにしたような言い方に完全にキレた私は「そうですか。結婚すればいいんですね! わかりました!」と席を立ち、ぷりぷり怒って役所を出たのだった。
まぁ、売り言葉に買い言葉というやつだが、今にして思えば入国管理局のおっさんがあんなに嫌なやつじゃなくて私をあれほど怒らせなかったら、私は勢いで結婚してなかったかもしれない。そういう意味では、あのおっさんに感謝、である。