私のエッセイはだいたい自虐
古墳に興奮する父親を冷静に見つめ、驚きの場所から驚きのものが見つかり、1日のサイクルを見直したら衝撃の結果になったことや、実家の庭に突然、巨大な鳥が集まりだす事件、「坊や」と名付けた自転車との別れと再会…。
妄想好きな三浦さんを驚愕させた度を超えた妄想など「しをんワールド」は1度ハマると抜け出せない面白さです。
「エッセイというのは自虐か自慢なんですが、私はだいたい自虐。でも自虐も裏返せば自慢ですから……って、なんの自慢かよくわからないけど(笑)」
今回、単行本化にあたって加筆したところ、書きすぎて予定していたページギリギリになってしまうほどだったそうなので、連載時からのファンの方も楽しめる内容になっています。
「5年分の原稿と書き下ろしという結構なボリュームなので、最初のページから順に、集中して読まなくても大丈夫です! 集中して読むと疲れたり、アホになってしまうんで(笑)。
ちょっとした隙間の時間とか、息抜きしたいなというときにパラッと読んでいただければいいですね」
ライターは見た!著者の素顔
三浦さんのご家族(父、母、弟)のエピソードも頻繁に登場する本書。みなさん、気づいてらっしゃるのでしょうか?
「今のところクレームはないので、たぶん読んでないんだと思います。母は『これはフィクションだから』と言うと『ああ、そうよね』って引き下がるんです。自分の言動とか、あんまり覚えてないんですよ。
だからフィクションだって言い張ると、捏造かなと思うみたいで。エッセイだから、ノンフィクションなんですけどね(笑)。父は老眼がひどいと言ってたし、弟はまったく活字を読む習慣がなくて、肉体の鍛錬に忙しいので……たぶん大丈夫でしょう!」
(取材・文/成田 全)
●PROFILE● みうら・しをん。1976年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部文学科演劇専修卒。2000年『格闘するものに◯』でデビュー。'06年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞、'12年『舟を編む』で本屋大賞を受賞。著書に『神去なあなあ日常』『風が強く吹いている』『きみはポラリス』『光』『ののはな通信』『愛なき世界』『ビロウな話で恐縮です日記』など。