担任の目を見るのも怖い
指導が終わったのは17時15分ごろ。担任が直人くんに家庭訪問をするのは、その約1時間後だ。
「調査結果の説明に来た際、校長は口頭で“今回の件(担任の指導)が関連していることが推測できますので、学校長として非常に申し訳ないという思いでいっぱいだし、残念であるという気持ちでいっぱい”と言ったのですが、指導の影響については文面にはありませんでした」(繁さん)
自殺の原因について学校は調査の結果、「原因不明」としたが「遺族としてなぜ? という気持ちが強かった」(市教委)ため、市長のもとでの詳細調査を要望、第三者委員会が設置された。
第三者委は結論として指導死と認めた。直人くんの行為は「いじめ」ではなく、指導にあたっては学校組織として対応する意識が欠けていたと指摘。指導した生徒5人のうちの1人に頭を叩いていたことも発覚、生徒の尊厳を傷つけたとした。また遡ること9月、授業中に、消しゴムのカスの投げ合いをしたことで直人くんたちは指導を受けたが、その際に聞き取りをした記録がないことも批判した。
「9月のことは直人から聞きました。担任の目を見るのも怖いと言っていたんです。“女をぶつ”って」(繁さん)
調査では、指導以前の暴言や暴力も明らかになった。担任の姿勢も自殺の背景になっていると分析されている。
遺族は、市教委に報告書をどう受け止めるかなどについて質問状を出した。市教委は「当時の判断としては瑕疵がなかった」と回答。遺族は「反省がない」と予定していた教育長との面会をキャンセルした。すると市教委は「対立していたのでは前に進むことができない」とコメントを撤回。報告書を市内の学校に配り閲覧可能な状態にしている。
また、市教委は再発防止検討委員会を設置、10月に3回目の会合が開かれ遺族もメンバーに加わったが「まだ具体的な話し合いはしていません。市教委は積極的ではない印象を受けます」と繁さんは話す。
誰のため、何のための指導なのか、そのあり方を見直すことが大切だ。