間違った人を叩いて神様的ポジションに
木下や美奈子のように不快感を持たれている人だけが炎上するわけではない。
演歌歌手の神野美伽は、ブログに投稿した非常識な振る舞いが批判され炎上。ことの発端は8月、《酷いよー!》というタイトルのエントリー。
内容は、新幹線に乗車する前に購入した食べ物にフォークがついていなかったため、《車掌室をノックして恐る恐る車内販売のカートにはお箸少し乗せてたりしますか?って聞いてみたら、若い女性の車掌に『箸もフォークもありません!』と言いながら扉を閉められた(中略)ショックでした悲しくなりました》とまるで被害者のように投稿。すぐに、コメント欄は《非常識!》と批判が相次いだ。
これに対し、神野は謝罪をブログで発表するも自己弁護が入っていたことで逆効果となった。
前出の渋井さんは、
「炎上が続く人の多くは気持ちよく謝らないんです。アンチに感情的になったり自己弁護が続きます。雨上がり決死隊の宮迫さんは闇営業騒動のときにツイッターで“金銭をもらってなかったとはいえ”という一文を入れたことで、さらに怒りを買いました」
謝るときは潔くがいちばん! ということだが、友人が先に謝罪するという妙なケースを起こしたのは、モデルのSHIHO。昨年放送された『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)にゲスト出演した際に叱らない子育て論を披露。
「ママ友の東尾理子と旅行中、新幹線で娘が他人の座席に行き、その人のケータイ電話で勝手に遊びだしたというエピソードを披露したんです。その際にケータイを勝手にいじられた乗客に謝罪したのは東尾だというおまけつき。このエピソードを面白い話として話すことにもあきれましたが、すぐに視聴者からブーイングが殺到し、後日“私の子育てが間違っていた”と謝罪していました」(芸能記者)
やらかしてしまう人を叩く人の心理として、昭和大学医学部精神医学講座教授の岩波明さんは、
「間違ったことをしている人に対して正しい意見をしているので、自分が神様的ポジションにいる気がしてしまう。裁判官として、神としての自分を満たしてくれる。賛同者も多いわけですから気持ちいいですよね。こういう人たちは頭もいいし能力もあるけれど、社会ではいまいち活躍できていない。一方で間違った行動をしている人たちがいい立場にいる、これは許せない私刑だ! となるわけです」
前出の渋井さんも、
「ネット社会にはやらかしてしまった人を見つける部隊もいます。神野さんのブログ読者はそう多くないと思うのですが、そのブログを共有し、みんなに叩かせるという人たちもいるのです」
自業自得といえなくもないけれど……。
《識者PROFILE》
渋井哲也さん ◎ジャーナリスト。長野日報を経てフリー。東日本大震災以後、被災地で継続して取材を重ねている。『ルポ 平成ネット犯罪』(筑摩書房)ほか著書多数
岩波明さん ◎昭和大学附属烏山病院院長1959年、神奈川県生まれ。昭和大学医学部精神医学講座教授'85年、東京大学医学部卒、東大病院精神科、東京都立松沢病院、埼玉医大精神科などを経て2012年より現職。'15年より昭和大学附属烏山病院長を併任。主な著書に『他人を非難してばかりいる人たち バッシング・いじめ・ネット私刑』などがある