2、3人目を産める社会環境を

 前出の西川先生は、

「2人目不妊は続発不妊といい、全体の2~3割を占めています」

 1人目は自然妊娠をしても、2人目が不妊というケースもある。

「1人目の出産で大量出血をしたり、胎盤が部分的に剥離したり、感染による内膜炎を起こすなど、出産によって妊娠しにくい身体になってしまうこともあります。もともと妊娠しにくい原因があったけれど、1人目はたまたまいい卵子と精子が出会ったという可能性も。ともあれ、いちばんの原因は1人目不妊と同じく加齢です」(西川先生、以下同)

 また、長く授乳を続けると前出のプロラクチンが影響して、黄体ホルモンの分泌が悪くなり、受精卵が着床しにくくなるという。

「男性側にも問題があります。2人目という年齢になると、仕事でストレスがかかることが多くなり、生活習慣の乱れから不妊につながることがあります」

 禁煙やアルコールを飲みすぎないことも大切。

「EDや精液量、精子の数、運動率などが下がってくる年代なので、まずは検査を受けることです」

 1人できたのだからと油断せずにきちんと検査をすることが重要。

「妻の結婚年齢と子どもを持てる確率のデータがあります。20~24歳までに結婚したら、子どもの数の平均は2・08人。35~39歳では1・16人です。35歳を過ぎて子どもが生まれた夫婦は、2人目を望んで半年妊娠しなかったら、不妊治療が必要かということは別として、積極的に原因と妊娠しやすい方法を考えたほうがいいでしょう」

 妊娠しやすい方法のひとつは、男性の禁欲期間を長くおかないこと。

「精子は2~3か月前から作られています。精巣細胞から精子になり、精巣上体というところに蓄えられます。その精子には寿命があって、何か月も放っておくと、死んだ精子ばかりになってしまいます。いつでも出して、新しい精子を準備させておくことが大切です。週に1回は、射精しておくのがいいでしょう」

 また、男性の不妊として

「最近では、精索静脈瘤(りゅう)が原因の造精機能低下による不妊が目立っています」

 精索静脈瘤とは、精巣周辺に静脈瘤(静脈が拡張したこぶ状になった状態)があることで、男性の不妊患者の40%以上に認められているデータもある。それに加え、2人目不妊は資金面の問題も大きいという。

不妊治療をするにしても、先立つものがないとできません。日本の給与体系は世界の先進国の中で、どの業種をとっても低いクラスにあります」

 前出の秋山さんのように、資金面が不妊治療に踏み切れないひとつの大きな要素であることは確かだ。

「高額となる体外受精の費用のサポートが十分にできていれば、2人目不妊に対応することができ、もっと人口を増やすことができるかもしれません。2人目、3人目を産める社会環境を整えることが大切なのでしょう。それが今、日本ではできていませんから」

 出産には男女ともタイムリミットがある。社会環境の問題を重要視して、制度の改革を早く進めてもらうことが、2人目不妊には大切なことなのだ。


《PROFILE》
西川吉伸先生 ◎西川婦人科内科クリニック院長。医学博士。医療法人西恵会理事、日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会会員、日本受精着床学会会員、大阪産婦人科医会代議員ほか。