しかし指標がデジタル市場や、アイドルファン以外の興味関心が多分に含まれたカラオケランキングになると、状況は一変。CD売上で圧倒的な存在感を見せているはずのアイドルソングたちは、もれなく圏外へと落ちていってしまうのが実情だ。
ちなみに、オリコン売上&JOYSOUNDのカラオケランキングでアイドルソングが同時期にトップ5入りを果たしていたのは、現時点で2013年リリースのAKB48『恋するフォーチュンクッキー』(2013年オリコン年間シングルランキング2位/2014年JOYSOUNDカラオケ年間ランキング2位)が最後の記録にもなっている。
ということはランキングの二極化、つまりアイドルの音楽作品と世の関心の間にできてしまった「距離」は、もう6年も、そして令和の今この瞬間も、止まらずにずっと広がり続けているということになる。
なぜ“国民的アイドルソング”は誕生しなくなったのか
平成の後半から令和のはじまりにかけて、なぜ日本のアイドルソングは世間一般の関心から離れていったのか。
かつて人々の共通の話題として、圧倒的な力を持っていたテレビコンテンツの衰退。ほかにもさまざまな要因はあるものの、その疑問を探るには、やはり国内で広がっていった「デジタル音源のダウンロード購入や定額制音楽配信サービス(サブスクリプションサービス、以下サブスク)」の話題を避けては通れないだろう。
総務省の令和元年版・情報通信白書によれば、ちょうど日本でスマートフォンの世帯保有率が50%を突破したのは、『恋するフォーチュンクッキー』がヒットしていたのと同じ2013年になる。
そのころからスマホアプリでの音楽再生が普及し、さらに2015年ごろからApple MusicやSpotify、LINE MUSICといった大手サブスクが一斉に登場したことで、日本国内のデジタル音楽市場は、急速に成長を遂げていくことになった。
しかしスマホ時代到来の直前に、ファン向けの購入特典という“発明”でCDチャートを制覇していた日本の大手アイドル運営は、一度、手にしてしまった成功の記録を手放せず、結果として音楽配信の分野ではかなり後れを取ってしまう。
例えば『恋するフォーチュンクッキー』のあとも、オリコンのシングル年間売上1位記録を伸ばし続けているAKB48は、音源のダウンロード販売自体は行っていたものの、サブスクについてはしばらくの間、CD発売から半年が経過しないと最新音源を聴くことができなかった。