木村拓哉が主演を務める日曜劇場『グランメゾン東京』が視聴率・反響ともに好調だ。数々のドラマを社会現象化さえてきた彼の“視聴率男”時代の伝説を、今こそ振り返りたい。

 '08年に放送された月9ドラマ『CHANGE』(フジテレビ系)。木村演じる朝倉啓太が、議員だった父を不慮の事故で亡くしたことをきっかけに政界へ進出し、内閣総理大臣に就任。政治の世界で奮闘する姿を描いた、サクセスストーリーだ。

木村さんが総理大臣役を演じるということで、放送前にもかかわらず、かなり注目が集まっていました。当時の木村さんのドラマと言えば、視聴率は20パーセント以上を取ることが至上命題。大胆な設定が吉と出るか凶と出るかと、こぞって話題になっていましたね」(テレビ誌ライター)

 同時期に放送されたドラマが4月放送開始だったにもかかわらず、『CHANGE』は“異例の奇策”を取った。

ほかのドラマと視聴率を比較されることを避けてか、当初予定されていた4月の放送日から1か月以上遅らせた、5月から放送をスタートさせたんです。1か月以上も初回放送を遅らせたのは、このドラマが初めてだと思いますよ」(芸能プロ関係者)

『CHANGE』は1か月遅れで

 コラムニストのペリー荻野さんいわく、木村が主演のドラマであれば、このような例は珍しくないという。

木村さん主演の作品で、このように放送日を遅らせた例は『CHANGE』のほかに、'09年に放送されたTBS系の『MR.BRAIN』があります。放送中のTBS系『グランメゾン東京』も1か月は遅れていないものの、少し遅れて放送されました

 このように初回放送日を大幅に遅らせた例は『CHANGE』が初めてだが、『MR.BRAIN』も例にならい、この奇策を実行したという。初回を遅らせることにどのような効果があるのだろうか。

4月は世間的に新生活がスタートする時期でもあるので、行事や引っ越しで忙しい時期でもありますよね。そういった状況では、ゆっくりドラマを見る機会がほかの時期に比べて少なくなるという点と、ドラマが新しく始まる時期に放送される、特番のバラエティー番組などに埋もれてしまうといった危険性もあります」(荻野さん)

 しかし、このような策を打てるのも主演が木村だから。

ほかのドラマより1か月遅らせて放送するには、いわばそれだけの焦らしに耐えうるキャストでないといけません。“やっと見ることができる!”という視聴者の期待に応えるだけのスター性を兼ねた木村さんだからこそ、テレビ局もこのような作戦で視聴率が狙えると踏んだのだと思います」(荻野さん)

 スターとしての一面は、撮影現場でも惜しみなく発揮されていたようで……。

木村さんは毎回、演者やスタッフに感謝を込めてプレゼントをするんです。『CHANGE』の現場には、ファッションデザイナーのNIGOさんが手がけていた『A BATHING APE』の特注パーカを差し入れしてくれました」(制作会社関係者)

 全10話中、20パーセントを下回ってしまったことが4回あったものの、平均では22パーセントでフィニッシュ。制作スタッフも、胸をなで下ろしたに違いない。