「相手がいてこそ」の結婚
バカリズムは語っていた。
「どうせ自分は女性から好かれていない。だから、“いいな”と思う人でも、この人は俺のこと好きではないから、考えないようにしようと思ってしまう」(フジテレビ系『ボクらの時代』2015年5月10日)。
女性とトークすること自体は苦手ではない。男子校から映画専門学校に進学したときも、スムーズに女性のグループの中に入ることができた。「(本名の)升野英知という“ひとつの性別”として見られたところ」があった(フジテレビ系『ボクらの時代』2013年4月28日)。
ただ、女性と親密になるまでには距離がある。まず、女性に連絡先を聞くことができない。「なんか、ワーッてしゃべって、『じゃあ連絡先を』って言ってるときには、ちょっと真顔の感じがすごい恥ずかしくて。グラデーションがうまい感じにいかないんです」(日テレ系『しゃべくり007』2017年3月27日)。
他方、芸人としてのバカリズムは、かつて落語家の立川談志に言われたという。
「ほかの芸人はパズルをどういう絵柄するかで笑いをとってるんだけど、お前はパズルの枠組みから考えようとしているから、それはいいことだ」と(NHK Eテレ『先人たちの底力 知恵泉』2019年4月2日)。
ピン芸人として多種多様なパターンのネタを披露してきたバカリズムは、ほかの芸人が築いてきた”枠”にとらわれず、ときに問い直す。そんな志向性は、結婚についても同じだったのかもしれない。結婚への意欲を率直に問われた彼は、次のように答えている。
「それは相手がいてこそだと思うんですよ。最初に『結婚したい』を掲げて、それに見合う相手を探すって、相手に失礼だと思うんです。あの人と結婚したいかどうかってことだと思う。枠じゃないから、結婚って」(日本テレビ系『バズリズム』2017年8月18日)。
相手がいてこそ。そんな彼に相手が現れたとき、「女の子苦手芸人」などというあてがわれた“枠”にとらわれるはずがなかった。