【コラム1】菌とウイルスの違いを知ろう
菌とウイルスは生物学的にまったく違うもの。
「菌はウイルスに比べて10~100倍も大きいのです。種類にもよりますが、菌をゾウにたとえると、ウイルスはネズミほどになります」(具芳明先生、以下同)
決定的な構造の違いは細胞があるかないか、菌には細胞があるが、ウイルスには細胞がない。ウイルスは、遺伝子がタンパク質の殻に入っているようなもの、つまり、生物の定義にはあてはまらないが物質ともいいきれない微妙な立ち位置なのだ。
「ウイルスは、菌のように細胞をもたないので自分で増えることができず、細胞に入り込んで増殖するやっかいものです。風邪やインフルエンザは、ウイルスが原因。感染者の飛沫などから身体の中に入り込み、細胞を宿主にして増えていきます」
ウイルス性の病気にかかったときに抗生物質を飲んでも、敵がいないのに攻撃を続けているだけ。それどころか腸内細菌が殺されて、風邪やインフルエンザで体調が悪いときに、腹痛や下痢で苦しむことになるのだ。
ちなみに昨年、東大の研究チームが、抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」が効きにくい耐性ウイルスについて発表し、こちらの動向も気になる。
【コラム2】大腸菌の驚異! 膀胱炎の薬が効かない!?
薬剤耐性菌で、世界的に問題となっているのは大腸菌。
「大腸菌はお腹の中にいる腸内細菌です。大腸菌の薬剤耐性菌に感染すると、身近な例でいうと、膀胱炎の治療が難航します。膀胱炎は、直腸にいる大腸菌が尿道から膀胱に入り炎症を起こす尿路感染症です」(具芳明先生、以下同)
膀胱炎は菌が原因のため抗生物質が使われるが、原因となった大腸菌が薬剤耐性菌だと効く薬の種類が減り治療が難航する。菌が腎臓にまであがってくると、腎盂炎を起こし重症化する可能性もある。さらに、菌が血管に入ると全身に回り菌血症を起こして命にかかわることも!
「膀胱炎に効く抗生物質は数種類あるため、必要以上に恐れることはありませんが、複数の抗生物質が効かないスーパー薬剤耐性菌に感染したら治療が困難になることもあります」
スーパー薬剤耐性菌の大腸菌は世界各地で見つかっており、感染の可能性はどこにでもある。