英国に伝わる“赦し”の精神
──そもそも、渡邉さんが最初に英国王室に興味を持たれたのは、何かきっかけがあったのでしょうか?
渡邉 ダイアナさんの結婚あたりからなので、実はそんなに古くないんです(笑)。最初はお仕事として携わりました。
それで’86年にダイアナ妃、チャールズ皇太子が初来日した際、青山一丁目の本田技研から赤坂迎賓館まで、8キロのパレート中継を担当して仕切ったんです。ダイアナさんとの距離は、直近1mくらい。本当に美しくて品があるっていうのは、こういうことなんだなって感心してしまいましたよ。
──そんなダイアナ妃は’97年に交通事故死を遂げ、世界中に衝撃が走りました。
渡邉 そうですね。’97年8月31日に、ダイアナさんが恋人とパリで交通事故死をして、世界中で大騒ぎのニュースになりました。当時、「こんなとき英国大使館っていったい何やってるんだろう」って思って、英国大使館に立ち寄ったんです。そうしたらどういうことでしょう。
いつもはバッチリと鉄の扉が閉まって、警備員さんもいる状態で誰も人を入れないようにしているのが、そのときは鉄の扉は開いてるし、お花はいっぱい置いてあるし、近所の人がどんどん中に入っていくじゃありませんか。
中に入ると、いつもパーティーなんかをやるお部屋には、早くも写真が飾ってあって。いろんな人が自由に来て、お坊さんまで来て拝んでるんです。私も’86年の初来日のときを思い出しながら祈りを捧げました。
そして部屋の外に出たらもっとびっくり! 英国大使館の執事が真っ黒なお盆に、冷たい氷水を入れたコップをのせて、弔問に来た人に差し出していたんです。
スキャンダルな死を遂げたわけですから、扉を閉めて誰も入れないと思っていたら、全部オープンにして冷たい氷水まで出して……。そこにエリザベス女王の、代々伝わる“赦(ゆる)し”の精神を感じましたね。