ジャニーズ事務所の売上は莫大でグループ合わせて1000億円以上とされ、上場企業並みといえる。しかし株式は上場していない。そこに相続の難しさがあるという。辻・本郷税理士法人の井口麻里子税理士によると、

「まず同族会社の株式の相続では、後継者に株式を集中させざるを得ないことが難題になります。会社の合併や定款の変更など、経営の根本に関わる議案を決議する『株主総会特別決議』では議決権数の3分の2以上の賛成が必要であり、会社の経営権を安定的に握るためにはそれだけの株式を相続することが肝となってきます」

 やはり社長を継承した藤島ジュリー景子氏への集中が考えられる。しかし非上場といえど規模が大きい分、評価額も高くなり、株にかかる相続税も大きくなることが予想されるのだ。相続税として納める現金も、上場しているわけではないから株式市場で簡単に株を売って現金化というわけにはいかない現実がある。身内に買ってもらうとしても、経営権がかかっている以上、それほど多く手渡すわけにはいかない。

「娯楽業」の上場企業の株価が相続に関係か

「相続税の算定のため非上場株式の株価を計算する方法には、類似業種比準価額方式と純資産価額方式、という2つがあります。これらを会社の規模に応じてミックスすることで株価は算定されます。

 会社の規模の区分には大会社、中会社大、中会社中、中会社小、小会社の5つがあります。大会社ならいずれか有利な方を選べ、それ以外の会社は両方式を併用することになります」(井口税理士)

 同事務所の公式サイトの「会社概要」には従業員数は130人(2月7日現在)とあるので大会社の区分なのは間違いない。大会社だと、類似業種比準価額方式で算定される株価を採用するものと考えられる。一般的に類似業種比準価額方式の方が株価が低く算定されるからである。

「類似業種比準価額の計算には、1株当りの配当金、利益、純資産などを使うのですが、面白いのは文字通り“類似業種の株価”がベースになるということです。この類似業種の株価ですが、『日本産業分類』で区分された業種が関係してきます。芸能プロは『娯楽業』という区分になってくると思われます。つまり娯楽業の上場企業の統計をとり国税庁が公表している株価や配当、利益、純資産などをベースに、ジャニーズ事務所の株価を算定するのです」(同)

 ちなみに娯楽業といっても、芸能分野に近い劇団や楽団から遊園地、映画館、パチンコホールなどまで多種多様な業種が含まれている。ジャニーさんがそれを知っていたかどうかわからないが、そのような業態の企業の株価が相続に影響してくるのは興味深いといえよう。