撮影は4か月にわたった。
「オーディションに受かってから撮影が終わるまで必死だったので(作品や役柄が)面白いとか手ごたえとかを全く考える余裕もなく、自分のことで精いっぱいでした。そのなかでも、見たことのない作品を作ろうという熱量がすごくある現場を初めて経験することができました」
時代の寵児(ちょうじ)だった黒木さんを演じた感想は?
「著書や資料がたくさんあるので、(役作りのために)やれることが尽きない。撮影期間中は黒木さんについて考える日々でした。最初は(AV業界に)偏見を持っていたけど、女性が性を訴えることに躊躇(ちゅうちょ)がないのが印象的で、仕事にかける思い、熱量は変わらない。自分で決めつけていたことや、当たり前と思っていたことが小さいことだったと感じました」
有名になるより「人の心を動かしたい」
女優を目指したのは、小学生のときに自宅近くで見かけたドラマのロケ風景に興味を抱いたからだった。
「撮影現場を見るのが好きで、あのなかに入ってみたいと。覚えているのは、多部未華子さんと松岡昌宏さんのドラマ撮影(2008年放送、日本テレビ系『ヤスコとケンジ』)。テレビは見ていたけど、その裏側を見たことがなかったので不思議な感覚でした。目の前に人がいる状況でお芝居をしたり、大きなマイクを持っている人がいることを知って、みんなで作っている光景が素敵で、照明さん、録音さん、なんでもいいから私も参加したいなと思っていました」
そんなときに東京・原宿でスカウトされ、芸能事務所に所属。演技レッスンを受けるようになり、女優への思いが強くなった。
「東京五輪が決まったとき(2013年)に、7年後に女優をやっているのか、もしかしたらOLになっているかもしれない、と思ったことはあります。でも(2020年が)近づくにつれて、オーディションには落ちているけど、ほかにやりたいことがなかったので、やめるつもりはなかったです」
連ドラ初レギュラーの『トップナイフ』は、主演の天海祐希はじめ広瀬アリスら初共演者に囲まれ、看護師役に初挑戦している。
「みなさん気さくで温かい。穏やかですが、撮影に入ると一気に集中力が高まる。一瞬の結束力は、そのまま脳外科の関係性に似ていると思いながら撮影しています。
天海さんは、緊急医療シーンで台本に書かれていない動きや目線を考えて先頭に立ってやってくださる。台本以外のことで、気になったことや提案されている姿に学ぶことが多いです。天海さんとのアイコンタクトシーンも楽しいです」
広瀬演じる新人医師・幸子とは“バディ”のような間柄。
「演じる真凛は、仕事のできる看護師ですが、同世代の幸子には気を許している一面もあるので、メリハリを大事に演じています」
今後については、控えめだ。
「女優は、有名になりたい、人気者になりたいということではなく、人の心を動かしたいと思って始めたので、その気持ちを大事にしたい。そういう作品や役をやりたいとずっと思っているので、ブレずにいたいです。明確な将来像は、ないけど、いまある役を全力でやっていけば、必要とされる女優になれるのかな、と思っています」
“全裸”からつながった“トップ”で、それを証明している女優道に期待したい。