物心つくころに移住した日本から今、クルド人の姉妹は切り捨てられようとしている。迫害を逃れ、この国で育ち、言葉も文化も身につけて、将来を切り開いてきたのに──。政府推進のもと、外国人労働者を増やす一方で、難民一家が直面した「危機」とは!?

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バットで頭を殴られ、資産も奪われ……

 19歳と20歳の姉妹には夢がある。2022年春にそろって卒業し、それぞれが保育士と看護師として働くことだ。姉妹はトルコ出身のクルド人。'08年の来日以来、日本社会で暮らしてきた。

 だが2年前、姉妹の家族は日本での在留資格を抹消された。その結果、姉妹に突きつけられたのは理不尽な将来だ。

 現在、就労禁止の「仮放免者」として生きる姉妹は卒業しても就職ができない。最悪の場合、トルコへの「送還」や法務省入管庁の収容施設への「収容」もありうる。姉のロナヒさん(20=以下、名前はすべて仮名)は訴える。

「私は8歳から日本を土台として生きてきました。両親はほかの日本人と同じように税金も年金も払ってきました。なぜその生活が、外国人だというだけの理由で、奪われるのでしょう。卒業後、私たちはどうなるのでしょう」

 姉妹の父親でトルコ国籍のクルド人のメメットさん(50)が来日したのは'07年12月。

 メメットさんは、トルコでの政治活動をにらまれ警察で拷問を受けたことがある。少数民族のクルド人は差別と弾圧の対象になっているが、メメットさんも例外ではなかった。

「殴る蹴るに加え、ガラスの破片が散らばる床を裸足で歩かされ、バットで頭を殴られました。会社の資産も全部奪われました」(メメットさん)