ほかにも、精神的なストレスも関わっていると奥村教授は続ける。
「例えば、マウスを身動きのとれないくらいの閉所に閉じ込めてしまうと、胃潰瘍になったり、果てには死んでしまいます。これもNK細胞の活動が低調になり、免疫力が落ちたため。
今回の新型コロナの騒動で話題になった『ダイヤモンド・プリンセス号』だって乗客を長期間閉じ込めていましたよね。あんなことをすれば、NK細胞の働きが下がるに決まっています。そのうえ、いつ自分が感染するかという精神的な不安も重なり、まさにウイルスに感染しやすくなる環境をつくってしまいました」
まさに“病は気から”
では、NK細胞を活性化するにはどうすればいいのか。
「あまり激しくない“ちんたら運動”がオススメです。激しい運動をすると、その間は活性化するのですが、終わるとリバウンドで運動前より低調になってしまいます。なので、緑の多い環境の中で少しだけ早く歩く森林浴をすると、非常にNK細胞の働きが上がるといわれています。
あとはよく笑うこと。落語でも喜劇でもいいですけど、大声を出して笑うことで上がっていきます」
NK細胞の活動が落ちる原因には年齢の問題もあるそうだが、日常生活の中で、ちょっとした心がけをするだけで変わってくるという。まさに“病は気から”に思える。
「本当にそうなんです。心の問題が深く関わっているんです。動物実験の面白い結果があります。子育てしている動物から子どもを取り上げてしまうと、そのストレスからNK細胞の働きは、ぐんと下がります。その隣に元気な動物を置いておくと、まるでうつったかのようにその動物までNK細胞の働きが落ちてしまうんです。
このメカニズムはまだわかりませんが、免疫に深く関係している要素だといえます」
食べ物などでも気をつけることはあるのだろうか。
「低調化を止めることができるのは、乳酸菌やキノコなどに含まれるβグルカン。キムチや納豆といった発酵食品もいいですね。あくまでも予防するには有効だということです」
最後に、免疫学の視点から今回の新型コロナウイルスのパンデミックについて奥村教授は、
「今の施策は“頭隠して尻隠さず”だと思います。集会を自粛させても、満員電車に乗っていれば意味はないでしょう。罹患(りかん)してから抗体ができるのに1週間。遺伝学的に抗体をつくる力や免疫力の上がり方が悪い人もいますので、完全にとは言えませんが、1回感染して回復すれば、免疫力でもう感染しなくなります。イタリアでは死者も多く出ていますが、日本とは医療のレベルが違います。
大切なことはストレスをためないで、細かいことは気にしない。それこそコロナウイルスについて過剰に心配しないことです」
チェックリストの奇数の項目の行動を心がけ、偶数の項目を避ければ、免疫力の活性化は間違いなし!
(取材・文/蒔田稔)