アニメやゲーム、マンガなどを舞台化した2・5次元作品で活躍する俳優の横田龍儀さん。中でも人気の高いミュージカル『刀剣乱舞』で刀剣男士を演じ、MANKAI STAGE『A3!』では主役を務めるなど、甘いルックスとフレッシュな演技で女子の心をときめかせている。そんな横田さんが、読売演劇大賞優秀演出家賞など多くの演劇賞を受賞する新進気鋭の演出家・藤田俊太郎演出の話題のミュージカル『VIOLET』で、本格ミュージカルに初挑戦する。

恐怖心があるくらい苦手

「出演のお話を最初にいただいたときは、今の自分では実力不足で足を引っ張ってしまうし、正直お断りしたほうがいいのかなと思いました。でも、逃げてばかりいても成長できないですし、今は少しでもほかのキャストのみなさんに近づけるように、全力でできることをしようと稽古に取り組んでいます」

 いちばんの課題は歌。

「本当に歌が苦手なんですよ。小さいころから得意ではなかったので、恐怖心があるくらい。演出の藤田さんにも最初にそれはお話ししました。そのときに“大丈夫、みんなから盗めばいい。歌の技術は確かに大事だけれど、それよりも芝居にも歌にも熱意をもってしっかり心を込めることが大切”だと言ってくださいました」

 もちろん歌のスキルアップにも取り組んでいる。

「出演が決まってすぐにボイトレに通い始めました。でも、まだまだみなさんとの技術の差は激しいので、もっと前から通っておけばよかったと後悔しながら、歌と格闘してます」

 今作は、黒人差別が激しかった1960年代のアメリカ南部を舞台に、幼いころの事故で顔に大きな傷を負ったヒロインのヴァイオレットが、あらゆる傷を癒す伝道師に会うため、長距離バスで旅をする物語。その道中でさまざまな人や多様な価値観と出会うことによって起こる、彼女の心の変化が描かれる。

「物語の時代背景を知るために、黒人差別を描いた映画のDVDを藤田さんが貸してくださって。『ミシシッピー・バーニング』や『グローリー』を見たのですが、こんな差別が現実にあったんだということを知って、衝撃を受けて。そういう歴史を知らなかった自分が恥ずかしいと思いました。この作品はそこまで直接的には伝えていないですけど、今の社会にもさまざまな形で存在する差別にも気づけたり、見る人にたくさんのことを伝えられる作品だと思います」

 横田さんは、ヒロインが訪ねる伝道師の助手ヴァージルほか、6役を演じる。

「ひとつの作品で6役もやるのは初めてなので、大変ですけど楽しいです」

 大きな挑戦になる今作で、ファンにも新たな顔を見せたいと決意を語る。

「ファンの方も僕が歌が苦手なのをご存じなので(笑)、この作品を機にそのイメージはなくしたいですし、自分の弱点を克服したい。2・5次元で僕を知ってくださった方にも、ぜひ見ていただきたいです」