同じく10カ月の子を育てる大阪府の母親は「パートの職場に4月から復帰予定だったけど、コロナの影響で職場が休みになりました。ずっとこもりっきりです。私も皆さんと話すのが楽しみでした」と語りはじめた。
普段から社交的なこの母親は子育てひろばなどを頻繁に利用していたと言う。おかげでママ友も多くでき、毎日のように同じ子育て世代の人と一緒に過ごしてきた。
だが、今回の外出自粛要請以来、だれとも会えずにいると言う。「旦那も帰りが遅いから、子どもと二人っきりです。大人と会話する時間がないのがつらい」と気持ちを話すと参加者全員が大きく頷いた。
「乳離れはどうしてる?」「うちの子は体重がすごく重いみたいで、まだお座りしかできないんだけど」などなど、その後もおしゃべりは続く。普段なら、こうしたたわいのない話は子育てひろばなどでできている。それがすべて閉鎖となり、人との接触もなるべく避けることが求められる今、乳幼児の親たちは孤独な日々を過ごしている。
静かな日々が「むしろいい」と感じる人も
一方、コロナの巣ごもりのおかげで、平穏な気持ちになれたという女性もいた。「落ち着いて子どもと向き合うことができて、むしろ新しい充実感が生まれている」。都内在住で11カ月の子を育てるこの女性は、慌ただしい毎日に少し疲れを感じていた。
「高齢出産なこともあり、“ママ友を作らなくちゃ”と躍起になっていた面がある。ベビースイミングにベビーマッサージなど、周りのママたちが通い始めたという話を聞くと、自分も“早く始めなくちゃ”と焦っていました。でも、誰とも会わずに自宅で子どもと向き合う日々を過ごすうちに、何かを習ったり、どこかに連れて行かなきゃと焦ることよりも、この子とのんびりと過ごす生活のほうが豊かに暮らせている気がしてきた。価値観をリセットできた」
普段顔を合わせているママ友たちとは、このような会話にはならなかったことだろう。なかなか言えない本音を吐き出せたのは、地域もバラバラ、会うのは画面越しだけ、というオンラインでの会合ならではかもしれない。
竹下さんは、「こうして些細なことや、気持ちを口に出して話すことはママたちにとってとても大切なことだと思う。それから、子育ては当たり前のことで、“つらい”と言ったらいけない気になる人もいるけれど、“つらい”と言っても大丈夫ですから、あまり考えすぎずに毎日を過ごしてください」と励ます。
今回のおしゃべり会のように、Zoomなど双方向で話せるツールを使ったオンラインでの交流は全国的に広がりつつある。地域で開かれている子育てサークルや子育てひろばの中にも自主的にオンライン開催をはじめたところもある。
こうした動きについて、子育て家庭の支援に詳しい筑波大学の安藤智子教授は、同じ経験をする者同士で話すことは外で人と会うことが制限される中で子育てをする親たちにとって、イライラやストレスのため込み予防につながると評価する。