今後のドラマは、コロナ禍不況が反映か

 言葉という壁を超え、気持ちをぶつけ合いながら愛を育んでいく、『愛していると言ってくれ』の豊川悦司と常盤貴子の姿に、多くの視聴者が感動した'95年。このドラマの1クール前に、野島伸司もやはり聴覚障害者を演じた酒井法子の『星の金貨』(日テレ系)を、秋には香取慎吾が知的障害者を演じ、若者たちの無力感を描いた『未成年』(TBS系)といった感動的な要素の強いドラマを手がけ、ヒットさせている。前出のドラマ評論家は言う。

「この年は、1月に阪神淡路大震災、3月には地下鉄サリン事件が発生した年でもあります。日本中が不安な気持ちに包まれる中、ドラマの中で感動を求めたいというところはあったのではないでしょうか」

 そして2020年。新型コロナウイルス禍において、これまでに経験したことのないような日々が続き、テレビ局もさまざまな収録が中断を余儀なくされた。そんな中で生まれた各局の再放送の流れだが、『野ブタ。をプロデュース』『ごくせん』など、'00年代の看板ドラマを放送する日本テレビ、シリーズドラマの多い利点を活かして、『BG〜身辺警護人〜』『警視庁・捜査一課長』『家政婦のミタゾノ』などの新作枠でシリーズ旧作を再放送するという、違和感の薄い再放送に取り組むテレビ朝日など、各局の色が出ている。一方、TBSは、『恋はつづくよどこまでも』『逃げるは恥だが役に立つ』『下町ロケット』など、比較的近年のヒット作を再放送していたが、'90年代のヒット作『愛してると言ってくれ』を放送しはじめるなど、幅の広い展開が見られるようになってきた。

 近年のヒット作品で視聴者の心をつかんだところで、懐かしさに加え純愛・感動モノを持ってきたところに作戦のうまさを感じる。新ドラマの収録が再開されつつあるが、まだまだ放送するには至っていない。今後のテレビ界のドラマ放送について、テレビ誌関係者は、過去のドラマのように時代背景の影響が反映されるのでは、と言う。

「この再放送で、各局、どんなものが求められているかも、ある程度わかることになるかと思います。コロナの影響がどこまで続くかはまだまだわかりませんが、秋から冬あたりの新作ドラマには、不安な世の中を反映させたようなドラマが作られヒットするかもしれませんね」

 テレビドラマは、時代とともに“色”を変えていくーー。

〈取材・文/渋谷恭太郎〉