北九州市から得た4つの教訓
関東より東に向かうとどうなるのか。
「東だと札幌は北海道大学、札幌医科大学があり医学部が充実していますね」(上医師)
しかし、コロナを診察する感染症専門医の数に懸念を示すのは、東邦大学感染制御学の小林寅喆教授。
「今は感染症専門医を増やしている段階ですが、すべての病院で充実した対策がとれているとはいいがたい状況です。
専門医は地方で足りていませんね。感染が拡大する地域は、院内感染も起こりやすい。感染を低く抑えておかないと、対策もとりにくい。大都市圏に比べると、地方はその点、ぜい弱なので地方で感染爆発が起きることが非常に危険なんです」
北九州市でも3つの病院でクラスターが起こり、救急患者の受け入れを停止したことで医療体制がひっ迫している。
感染症専門医・呼吸器専門医で日比谷クリニック副院長の加藤哲朗氏は、
「専門医でなくても対応できる部分もありますが、患者の数が増えたり、重症例や院内感染が発生したりすると感染症の専門的な知識が必要になるので、対応が難しくなることがあります」
と、専門医の重要性を説く。
そこで地域の連携を重視するのは、感染症学が専門で昭和大学医学部客員教授の二木芳人さんだ。
「ひとつずつの都道府県では対応できないものがあるから、広域で対応する必要がある。今回も埼玉はボロボロだった。首都圏なら東京、埼玉、千葉、神奈川、場合によっては群馬、茨城、栃木全部で支え合う。そうすれば大きな波が来てもなんとかなる。計画は広域単位で考えるべきです」
さらに、沖縄や東北地方の連携については、
「沖縄は周りに県がないので、連携がとれない。心配です。連携がとれても、高知のように大きな病院が少ないところは、医療体制が弱い。東北地方は広いので、隣の県に行くのも大変。いざというときの連携の段取りを考える必要がある」
まさに、その“いざというとき”に、北九州市は襲われたのだ。第2、第3の北九州市が出てきたとしても、そのやり方は大いに参考になる。
今回の北九州市の事例から前出の郡山教授はこう教訓を語る。
「教訓は4つあります。1番目は緊急事態宣言を解除したので、社会活動を再開すれば必ず感染は起こるということ。2番目に、高齢者施設と医療施設の患者の移動は大きなクラスターを起こしうる。この間の移動を伴う場合は、今より慎重にならなければならない。
3番目は、濃厚接触者は健康観察ではなくPCR検査をすべきだということ。厚労省が最近になって、もっとPCR検査をしなさいと通達を出しています。4番目は受診するのを迷うくらいなら早くしたほうがいいということ。周りに感染させてからでは遅いですから」
北九州市で起きた“第2波”をみれば、ほかの都市も油断はできない状況だ。