もはや時代とズレている

 つい先日も、NHKが国際情報番組『これでわかった!世界のいま』が米国の黒人の置かれた状況を描いたが、黒人を危険分子扱いしたステレオタイプの描き方に批判が噴出。NHKは「配慮が欠け、深いな思いをされた方におわびいたします」と謝罪に追い込まれた。

 テレビ朝日の感性にも、首を傾げるものがある。これまたつい先日のこと、俳優の内藤剛志(65)が、共演した女優の菜々緒(31)と俳優の間宮祥太朗(27)を前に「同じ人間とは思えない」と感嘆し、その場面が番組宣伝の映像として同局の情報番組で普通に流されていたのだ。

 内藤が、相手をほめるつもりで言っているのであろうということがわかるが、「同じ人間とは思えない」という表現は明らかに行き過ぎで、それを言われた菜々緒も困惑気味だった。

 しかも内藤は、菜々緒「いったい何を食べたら、そんなに足が長くなるんですか?」と、答えようがないことまで聞いている。職場で言ったら、セクハラで一発アウトである。

 ほめるからいい、というわけではない。ほめようがけなそうが、見かけで人と人の違いを計るその物差しを持っているということが、もはや時代とズレているのである。

 アメリカで同様のことを言ったら、それだけで大問題になる。現地では見かけのことは何も指摘しない、年齢を聞いたりしない、性別も尋ねない、「せいぜい話題にできるのは、きれいな歯ですね、と言ったことぐらいですよ」とアメリカ滞在から一時帰国した人に以前、聞いたことがある。

 佐々木希の見た目を夫の不倫に絡めるコメンテーターも、NHKの黒人に対する誤った理解も、内藤の発言に共通して感じることは、時代認識に対する修正力の足らなさだ。

〈取材・文/薮入うらら〉