原因不明で治療の特効薬もない病気
病気のサイン:長引く冷え 26.膠原病
「冷えは寒さや血行不良が関係しますが、対策を行っても治らない冷えには病気が隠れていることがあります。膠原病(こうげんびょう)といわれる自己免疫疾患がそのひとつです」
膠原病とは症状に共通点をもつ病気の総称で、腎臓病、心臓病と呼ばれるのと同じ。関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、血管炎、強皮症、皮膚筋炎などが含まれる。
「自己免疫疾患は、女性に大変多い病気です。というのは、染色体に理由があります。女性はXX、男性はXYの染色体を持ち、免疫細胞はX染色体が関係しています。
つまり、女性は男性よりも免疫細胞が活発といえます。小さいころは風邪をひきにくく元気でも、ミドル世代になると免疫システムが自分自身を攻撃してしまう病気を起こしやすくなります」
シミやイボができるのは、年をとったから? ではなく、なんと胃がんのサイン。
「脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)という高齢者によくみられる平たいシミのようなイボが、急に胸や背中に出てきたら胃がんのサインかもしれません。あまり知られていない症状ですが、がん細胞が出す物質によるもので“レーザー・トレラ徴候”といいます。
胃がんだけでなく、すい臓がんや大腸がんなど内臓のがん全般にみられます。すべてに出るわけではありませんが、短期間で増えたり大きくなるのが特徴なので見落とさないようにしましょう」
レーザー・トレラ徴候に詳しくない皮膚科へ行くと見落とされることもあるという。
「レーザー・トレラ徴候はもともと皮膚科の範疇(はんちゅう)ではありませんので、急に増えた場合は年齢による脂漏性角化症と判断されても、内科や消化器内科を受診したほうがいいかもしれません」
病気のサイン:やる気がなくなってふさぎこむ 28.脳腫瘍
昨年、脳腫瘍で入院した落語家の三遊亭円楽さんは、発病する1か月前から気分が落ち込むなどの自覚症状があったという。
「脳腫瘍によって気分の落ち込みが出たというよりも、頭痛や吐き気などの二次的な症状による気持ちの変化なのかもしれません。いずれにせよ、いつもと違ううつ状態が続くときは、その背後に病気が隠れているかもしれませんから見逃さないようにしましょう」
脳腫瘍の症状は、腫瘍ができた部位によって異なる。前頭葉の場合は言葉が出なくなり自発性や集中力、記憶力が低下、側頭葉では言葉を聞いて理解ができない、片方だけ視野が欠けるなどで、小脳ではふらつきやめまいが起こる。
「脳腫瘍というと重大な後遺症というイメージがありますが、早期に発見すれば予後は決して悪くありません」
病気のサイン:光や音が痛い 29.線維筋痛症
レディー・ガガがかかったことで、その病名が広まった線維筋痛症(せんいきんつうしょう)。昨年、元フジテレビアナウンサーの八木亜希子さんもこの病気で休養した。
「線維筋痛症は、光や音など些細(ささい)な刺激で全身に痛みが生じる病気で、激しい痛みが続きます。息をしても痛い、風が吹いても痛いという、とてもつらい病気です。全身に針を刺されているような痛みを感じるという人もいます。ミドル世代以降の女性に多く、日本では200万人の患者がいます。
原因はストレスが関係しているといわれていますが現在のところ不明で、線維筋痛症を治す特効薬もありません。自己免疫疾患のひとつではないかという説もあり、主にリウマチの専門医が担当することが多いようです。痛みと付き合っていかなければならない病気ですが、ほとんど痛みを感じなくなるほど回復する例もあります」
病気のサイン:皮膚が黒くなる 30.バセドウ病
外に出て日焼けもしていないのに色黒になったら、バセドウ病かも! 橋本病とは逆に、甲状腺機能が過剰になってしまうのがバセドウ病。常にジョギングしているような状態が続き、脈拍が速く、汗が多く、暑がりで疲れやすくなる。
「女性に多く、男性に比べて5倍も患者数が多い病気です。多様な症状がみられますが、そのひとつに皮膚が黒くなることがあります。バセドウ病により過剰に出る甲状腺ホルモンはメラニンと分子構造が似ていて皮膚の色を黒くします」
目が出てくるのがバセドウ病の特徴的な症状だと思われがちだが、その症状が出るのは約3割だという。
「新陳代謝が活発になるので食べても太らないのも特徴です。これはいい症状のように思えますが、バセドウ病にかかると橋本病にもかかりやすく、両者を行ったり来たりすることもあり、本人にはつらい病気です」
(取材・文/山崎ますみ)