和田氏の告発状は受理されず

 1時間ほど話をしたが、とも子さんと事件を結びつける証拠らしきものは何も出てこない。さらに追及すると、和田氏は1枚の書類を見せてきた。

 差出人は、甲府地方検察庁事件管理担当。

 和田氏が甲府検察庁に出向き、告発状を提出したのは事実のようで、その内容についてはこう説明した。

「告発の容疑は“警察の捜査妨害”です。とも子さんが警察に提出した美咲ちゃんの写真は本人とは異なっています。警察はまったくの別人を捜査してしまったので、これは捜査妨害に当たります」

 しかし、和田氏の書類は《告発状の返戻について》と題し、令和2年1月6日付の告発状を検討した結果が、次のように記されていた。

《前記犯罪構成要件に該当する事実(いつ、どこで、どのようにして等)が具体的に特定されているとは認められません》

 和田氏のブログには、美咲ちゃんだけでなく、小倉家の親族の写真までもが掲載されている。プライバシーの侵害や名誉毀損に当たる可能性があるが、それでもブログを続ける理由について、和田氏はこう開き直った。

「今の世の中にはジャスティス(正義)がない。とも子も旦那も美咲ちゃん事件の主犯です。名誉毀損というなら、訴えなさい。白黒つけましょう!」

 和田氏の家を辞した翌7月7日もブログはいつもどおり更新され、相変わらずとも子さんの家族写真を掲載している。

 同日は、とも子さんの慟哭の日々(前編)が綴られた本誌の発売日。ブログのコメント欄には記事を読んだユーザーからさっそく書き込みがあった。

《またとも子ひとりの意見を垂れ流している》

 との感想をいただいたので追記しておこう。私はとも子さんの近隣宅や美咲ちゃんの通う小学校の取材もしており、いずれもとも子さんの話の整合性を確認している。

 また、私の経歴やメールアドレスも記載されており、特定班の動きの速度も確認できた。

 取材を終えた私は、和田氏とのやり取りを資料として警察署へ提出した。どちらにジャスティスがあるかはいずれわかるだろう。

●情報提供のお願い
「美咲に似ている子を見かけたなど、些細なことでも情報を求めています!」(とも子さん)
【情報提供先】大月警察暑 TEL:0554-22-0110


取材・文/水谷竹秀 ノンフィクションライター。1975年、三重県生まれ。上智大学外国語学部卒業。カメラマンや新聞記者を経てフリーに。2011年『日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」』で第9回開高健ノンフィクション賞受賞。近著に『だから、居場所が欲しかった。バンコク、コールセンターで働く日本人』(集英社文庫)など。