「そもそも“怒り”とは、“べき”という言葉に象徴される、自分の理想や願望、譲れない価値観が思い通りにならないときに生じる感情です。“挨拶は目下の人から先にするべき”“打ち合わせには5分前に集まるべき”など、人はそれぞれ様々な分野に及び“べき”をもっています。

 年齢を重ねると経験値が増えていくわけですが、すると自分が“こうあるべき”と思っていることが、それこそが正しいと思い込みやすくなることがあります。例えば自分よりも年齢が若い目下の人が、自分の“こうあるべき”に当てはまらない言動をとった時に、“普通こうするよね”“これって常識だよね”と、高齢者の方は思い込む傾向にあります。そのため、怒りやすくなる人もいるということです」(戸田理事)

 つまりは話し合いの中で、上沼が持っている“こうあるべき”から逸脱した意見を年下のスタッフから言われたのかもしれない。もちろん、悪気はないとしても、彼女にとってみれば己の経験とプライドを傷つけられた、とも考えられる。

「あんなこと言わなければ」

 一方で、冒頭のラジオ番組では、関西テレビと対峙したとされる報道に「ケンカしてるってちょっと違う。関西テレビさんには足向けて寝られない」と、トーンダウンしていた上沼。

「怒りというのは、喜怒哀楽の感情の中でも特にエネルギーが強い感情です。“ついカッとなって”という言葉があるように、時に私たちは怒りが生じた瞬間に冷静な判断を失うケースがあるのです。アンガーマネジメントでは、イラッとしたり怒りが生じてから6秒経つと理性が働く、というふうに伝えています。

 その間に、怒りに任せて暴言を吐くなど、衝動的な行動をしてしまう人もいます。そのため、後になって“あんなふうに言わなければよかった”“あんなことしなければよかった”と後悔する、自己嫌悪に陥る人もいるのです」(戸田理事)

 まさに上沼は“ついカッとなり”、言ってしまった手前、自ら折れることができなかったのではないか。一方の局側はというと、

「あの温厚な上沼さんに、すごい剣幕で目の前で“辞めてやる”と言われて、“そこをなんとか続けてくださいよ”とは言えませんよ(苦笑)。おそらく場は凍りついて、誰も仲介に入れない状態だった。上沼さんの意見が覆されず、双方が平行したまま本当に番組終了までいってしまった、というのが実際のところではないでしょうか」(関西ローカル局ディレクター)