本拠地が西成のど真ん中にあり、タバコやら弁当やらは西成の路上に出ていた違法露店で買った。弁当は転売屋がどこぞで集めてきた消費期限切れのものだし、タバコは片言の日本語で商売するおばちゃんが売る得体の知れない安いモノだった。となりには中古の電気工具や、ヤクザが作った裏ビデオなんかが売られていた。
僕は働くうちに、西成の住人になっていたのだろう。当然、相変わらず酔っ払って騒いでいるオッチャンたちはいるのだが、自分が住人になると全然怖いとは思わなかった。
「人が睡眠もとらずに働いてるのに、呑気に昼間っから酒飲みやがって……」
とイラッとするほどだった。
焼き鳥屋の同僚はホームレスに罵声を浴びせていた。まさに貧すれば鈍するである。
ブルーハーツの《弱い者達が夕暮れ さらに弱い者をたたく》(作詞:真島昌利、編曲:THE BLUE HEARTS)である。
全国で進む“ホームレスゼロ計画”に思うこと
今昔、ホームレスに対する暴力は後をたたないが、加害者はサラリーマンである場合も多い。彼らは
「のんびり寝ているホームレスを見て腹が立った」
などと理不尽な動機を語る。
よっぽどストレスが溜まってるんだなあと思う。だったら自分もとっとと辞めて、河川敷でビールでも飲んだらいいのだ。
そんなホームレスだが生活保護を受けやすい政策になり、ぐっと数を減らした。
現在は、僕が取材をしていたときの十分の一以下になっている。
それは国や東京都などが、ホームレスをゼロにするために努力した結果だと言える。これはもちろん悪いことではない。ホームレスをやめたいと思っている人たちは、ほぼやめることができた。
ただそれでも現在もホームレス生活を続けている人たちがいる。彼らには、
「身体が丈夫な間は、福祉は受けたくない!!」
という強い思いがある人もいるし、単純に
「こういうふうに河川敷で暮らすのが好きなんだよ」
という人もいる。中には、借金や犯罪など後ろ暗いことがありアパートに定住したくないという人もいる。
そういう人たちも、基本的にはホームレス生活はやめてもらおうという動きがある。げんに、公園や駅舎で住むことはできなくなった。最後の砦というべき、河川敷もいつまで住めるかわからない。
もちろん、悪意だけで出て行けと言っているわけではない。彼らがホームレスを続けるのがいいのか、悪いのかはわからない。
でもまあ、そんなに四角四面にキッチリ決めなくていいんじゃないの? とも思う。
知らない誰かが河川敷に住んでたって別にいいじゃないか。
ホームレス問題は真面目に、でも寛容に考えていくのがいいと思う。
村田らむ 1972年、愛知県名古屋市生まれ。ライター兼イラストレーター、カメラマン。ゴミ屋敷、新興宗教、樹海など、「いったらそこにいる・ある」をテーマとし、ホームレス取材は20年を超える。潜入・体験取材が得意で、著書に『ホームレス大図鑑』(竹書房)、『禁断の現場に行ってきた!!』(鹿砦社)、『ゴミ屋敷奮闘記』(有峰書店新社)、『樹海考』(晶文社)、丸山ゴンザレスとの共著に『危険地帯潜入調査報告書』(竹書房)がある。