3:新章にはモデルあり、実際の航空会社は?

 原作の小説『銀翼のイカロス』で銀行に復帰した半沢直樹が新たに命じられたのは、破綻寸前の航空会社『帝国航空』の再建だった。

「モデルになっているのはJALこと『日本航空』です。’09年に経営危機に陥ったときの状況が、ストーリーのもとになっています」(航空アナリストの杉浦一機氏)

 今回のドラマでの登場人物も、実際の当事者をもとにキャスティングされている。

「国土交通大臣の白井亜希子役は江口のりこさん。毅然とした振る舞いと印象的な白いスーツ姿は蓮舫さんを彷彿させますが、当時、JAL再建に向けて動いていた大臣は前原誠司さんです。彼はドラマ同様に『JAL再生タスクフォース』を’09年9月に発足させて銀行側に債権放棄を要請しました」(杉浦氏、以下同)

 ドラマでは半沢の前に立ちはだかる大きな壁として描かれるが、実際の政府側の仕事ぶりはとてもお粗末だったという。

「前原さんにはJAL再建の明確なビジョンがなく、話をまとめることができないままタスクフォースは数か月で解散。銀行への債権放棄は果たせませんでした。結局、JALは’10年1月に倒産。半沢が勤務する『東京中央銀行』のモデルとされる『三菱東京UFJ銀行』は、514億円の債権が未回収となりました」

 そこまで経営が悪化してしまったのも、当然の成り行きだった。

「半沢は、帝国航空の負債は、多くの赤字路線や企業年金が原因だと指摘していましたね。しかし、JALの場合は放漫経営も原因でした。“半官半民”というポジションにあぐらをかき、何かあれば国が助けてくれるという甘えがあったんです」

 また、負債を抱えてしまった銀行側にも落ち度があったといえる。

「JALは巨大な企業ですから、銀行は信頼して融資を繰り返していました。回収できるだけの担保を設けていないということは、厳しい審査が行われなかったということです」

 経営破綻したJALだったが、’12年9月に再上場。ただ、再建を成し遂げた立役者は銀行ではなかった。

「迷走する前原大臣に代わって、首相官邸側は京セラやKDDIを創業した実業家の稲盛和夫氏を再生チームのトップに起用。社員の意識改革を徹底させて3年で見事V字回復を果たしました」

 JALの負債総額は2兆3221億円で、事業会社としては戦後最大の倒産劇だった。ドラマでは半沢の剛腕で帝国航空を立ち直らせるのか。