どんな業界の方でも、絶対自分に当てはまる
──『SHIROBAKO』が視聴者に伝えたかったことは何でしょうか。逆に、淳さんはこの作品から何を感じましたか。
佐倉:テレビシリーズでは、モノを作ることの楽しさとそのリアルを描いていて、それぞれの役割の人がつまずきながらも最善を尽くして、作品を作っていました。それが劇場版では、みんながちょっと低空飛行になってしまっています。いたはずの仲間は他社へ転職してしまったり……。
でも、この作品の見せ場って、そこからの“はい上がり”だったりするんですよね。その“はい上がり”と、夢や希望とか誰かの感情を揺さぶる作品、誰かの心を動かすモノを作ったり手伝ったりすることの楽しさ。そういったものがみなさんに伝わったら、たぶんこの劇場版と宮森たちの行動っていうのは、すごく意味をなしてくるのかなと思います。
木村:私は『SHIROBAKO』を通して自分自身が感じたことでもあるんですけど、仕事って山登りだなと思いました。すごく頑張って登って登って「あ、たどり着いた」って思った頂上でも、実はもっと先にさらに高い峰があって……。そういうのを繰り返しながら、みんな仕事をしていくのかなとすごく感じて。
『SHIROBAKO』って、おじさんだったりベテランの人たちが思い悩んでつまずいたりするシーンが多いんですけど、それも『SHIROBAKO』の魅力のひとつだと思うんです。そういうシーンを見ると、今、私の悩みはすごく大きく感じるかもしれないけど、それを乗りこえたら、またさらに高みにいけるかもしれない。そういう勇気をもらえる作品なのかな、と思っています。見てくれた人、それぞれに響くメッセージがきっとあると思うので、それを受け取ってもらえたら、『SHIROBAKO』がまたちょっと違う印象になると思います。
相馬:実はラストシーンで、この作品が伝えたいことをすごく簡潔に言っていると思います。この映画の最後をどう締めようか……って考えたときに、「答え、これだよね」ってなったんです。それが「俺たちの戦いはこれからだ」でした。いわゆる「俺たたエンド」ってやつですね。
『SHIROBAKO』ってアニメ業界を描いてますが、根本的には「働くってどういうことなのか」という意味も込められています。近い業界の方は、より共感してくれる方も多いですし、そうじゃない業界の方でも、自分に当てはまることは絶対あると思うんです。なんでもかんでも長く続けていればいいということではないんですが、いろんな苦悩があって、いいときも悪いときもあるけど、続けていく中で見えていくものも必ずあると思ってます。「俺たちの戦いはこれからだ」って簡単な言葉かもしれないけど、深い意味でも続いていくので、そこを「頑張って続けていこうね」って劇場版では伝えたかったことなんだと思います。
田村:『SHIROBAKO』が他のアニメと圧倒的に違うのは、キャラクターがみんなすごい立ってることだと思うんです。自分自身と近い登場人物が必ずいると思うんですよ。僕はたまたま木下監督に感情移入できましたけど、感情移入できるポイントがいろんなところにちりばめられてるんです。
その中でも、人とのつながりがないとやっぱり仕事はできなくて、生きていくこともできないんだよってメッセージが根底にあるのかなって。僕は勝手にそう思っています。『SHIROBAKO』を見ると、モノづくりがしたくなるんですけど、それ以上に、人との付き合い方、人との関係性の築き方がすごく大切だな、と思わせてくれる作品でした。
1973年12月4日生まれ。数々のバラエティー番組でMCを務め、ヴィジュアル系ロックバンド「jealkb」ではボーカルとして精力的にライブ活動も行っている。さらには海外での起業、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科への進学などタレントの枠をこえ活躍の場を広げている。
福岡県出身の声優、ナレーター。『SHIROBAKO』宮森あおい役のほかに『ソード・オラトリア ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝』(レフィーヤ・ウィリディス役)、『風が強く吹いている』(勝田葉菜子役)、『アイドルマスター シンデレラガールズ』(相葉夕美役)など。
東京都出身の声優。『劇場版「SHIROBAKO」』宮井楓役のほかに『Charlotte』(友利奈緒役)、『僕のヒーローアカデミア』(麗日お茶子役)、『BanG Dream!』(美竹蘭)、『五等分の花嫁』(中野四葉役)など。
株式会社ピーエーワークス富山本社に勤務中。2008年ピーエーワークスに制作進行として入社。『Angel Beats!』で初デスク後、『Another』『有頂天家族』『SHIROBAKO』などでラインプロデューサー、『サクラクエスト』以後はプロデューサーを務める。『劇場版「SHIROBAKO」』で言えば宮森と同じ役割。