ノーギャラで「企業案件」を強いられる

 そもそも、学内に設置された投票箱に学生や来場者が投票するだけだったミスコン。それがいつの間にかネットやSNSを通して「ネット投票」なる一般人向けの投票も始まり、エントリーした彼女たちの活動の場も大きく広がってしまった、と霜田氏。

「2012年くらいから、候補者たちがみんなTwitterをやるようになりました。これは時代の流れとして始まったことですが、とあるネット投票のプラットフォームサイトも出現して、そこから一気に、ミスキャンパスコンテストが一般人や大人にも開かれたものになっていきました。

 最初はネット投票のためのパフォーマンスのひとつだったライブ配信も、今ではマストの活動になっていますね。今年はリアルのイベントがほとんど行えないので、ネット活動の比重が必然的に高くなっている印象です

 インスタグラムで美容商品のPR投稿をしたり、文化祭前には何十時間も生配信ライブを行ったり、無限に来る一般人からのリプライを返したりと、傍目に見ても忙しそうなミスキャンパスたち。某大学の元ミスキャンパスコンテスト出場者に話を聞くと、これらの活動のほとんどが「ノーギャラ」であるということに愚痴をこぼした。

ミスコンが始まってからは、さまざまな理由で実稼働させられる時間が本当に長いです。配信活動には“一定期間内に〇〇時間以上配信する”などのノルマがあるし、それ以外でもイベントや撮影、スポンサー企業との顔合わせに呼ばれたりと、毎日ミスコンのために奔走するけれど、私たちのところにはほとんどギャラが入ってこないんです」

 彼女たちはミスコンを盛り上げ、グランプリ獲得に向けて奔走する。そこで生まれた利益はどこへいってしまうのか、彼女はこう続けた。

ミスコンを運営している広告研究会は、起業家を目指す子などが多くいて、学内でもいわゆる”意識高い系”の子が多く在籍するサークル。トップになると100万円もらえるっていう噂もあるくらいなので、私たちの稼働分で発生する利益は広告研究会に落ちていっているんですよね。スポンサー企業に対しては、就活用のエントリーシートを見てもらって内定の根回しをしてもらう、なんて話も聞いたことがあります。

 その割にスポンサーを取る営業活動も、私たちミスキャンが請け負ったりしているんです。でも、自分の前に先代ミスキャンの先輩たちが稼働してくれているから、それを思うと自分たちも断れない。SNSの運用の仕方や、PR投稿の内容についても細かく注意される。やってることはインフルエンサーマネジメントの会社と一緒です。そうまでしてSNSをチェックされても、自分の窺い知らないところでキレてくる通称“クソリプおじさん“もいるし、気苦労は絶えなかった……」

 ネットで一般投票が始まったことで、学生だけでなく大人に向けてもアイドル活動のようなことをしなければならなくなっているミスキャンたち。中には言葉遣いを注意してくるお門違いな“クソリプおじさん”や、写真から居場所を特定する“特定班”的なミスコンオタクがいたり……。一般人相手の広報活動も、我々が思う以上のストレスを感じるもののようだ。