総じて、各局が「作品には罪はない」という論調を展開させる動きが目についたのだが、そもそもこうしたことを「言い出し始めたのはここ数年のうちから」と話すのは芸能ジャーナリストの佐々木博之氏。
「かつては当然のようにCDの回収、DVDの発売中止などが行われてきたわけで、おそらくはギャラを含む作品の制作費が、以前よりも巨額になっている影響もあると思います。芸能界は“商業ベース”ですので、何か起きた時はなるべく被害を最小限に抑えようとするわけで、(作品を)出せるなら出したいのが本音です」
また近年の映画は「製作委員会」を立ち上げて複数企業から出資を受けることが多いが、
「そこにテレビ局も“スポンサー”として名を連ねていることが多く、制作費を回収しなければなりませんから、各局で(作品無罪の)風潮が起きやすいのかもしれません。
それに第一に、作品を観たい人、聴きたい人がいることは確かですし、作品=芸術のような考え方を持っているクリエイターもいます。また作品によっては共演者もいるので、世に出せなければ、その人たちも“被害者”になってしまう」(前出・佐々木氏)
明確な被害者がいない犯罪
では、「作品に罪はない」と議論すること自体ナンセンスではないだろうか。先のピエール瀧は昨年6月に懲役1年6か月、執行猶予3年の有罪判決を受けながらも、今年2月に来年公開の映画『ゾッキ』の撮影に参加し、復帰することを『週刊女性』が報じている。
「そもそも逮捕された、罪を犯した人が出演する作品の公開を規制する法律はなく、どう扱うかは各社の判断に委ねられます。しかし、それは犯罪の種類にもよること。例えば殺人事件を起こした、女性に暴行した、詐欺を働いたなどの被害者が出た犯罪となると、誰もが嫌悪感を示して見たくはなくなるでしょう。
一方で、ケースにもよりますが、薬物は明確な被害者がいることが少ない犯罪ですよね。そこが作品を世に出せるか、出せないかの判断の差にもなっていると思います。よって、今回の伊勢谷さんの場合も“作品に罪はない”の論調が目立つのでは」(前出・佐々木氏)
それでも犯罪であることには変わりない。復帰は置いておき、しっかり反省してほしい。