中長期的な視点でKFCを見れば、業績のさらなる躍進のためには、新たな需要の創出や新規出店も欠かせない。この2~3年、KFCの業績が右肩上がりできたのには、これまでクリスマスやお盆といった「ハレの日」に利用が集中していたところを、割安なランチ施策などによって、「日常食」として需要を切り開いたことが大きい。
新規客や休眠客を掘り起こし、日常利用しやすい価格帯と定期的な新商品を提供して、リピート客へと定着させる戦略が奏功したわけだ。KFCと聞いて、クリスマスでしか食べたことがない、しばらく行っていないという潜在的な客層はまだまだ多い。いずれコロナ禍が収まり、他の外食が復活してきたとき、今の延長のままでは、いつかは限界を迎えてしまう。
かつて日本マクドナルドは「夜マック」を打ち出し、弱点だった夜間の需要を作り出した。いまだ季節性の強いKFCには、シーズンや時間帯、客層で伸びしろのあるマーケットを探り出し、新しい需要を掘り起こす施策が求められよう。目下、「フレーバーレモネード」というドリンク商品で、アイドルタイム(昼と夜の間の閑散時間帯)の強化や客単価の上昇を図っているが、こうした一手を途切れることなく連打しなければなるまい。
現在の国内1131店舗体制は維持か拡大か
国内の店舗数は1131店舗あるが(2020年6月末)、現在の体制をどうするかも今後の注目点だ。既存店がフル稼働する時間帯が増えてくると、来店客がこれ以上増えても、対応しきれない事態も考えられる。新規出店によってこうした機会損失を防いだり、ニーズのある新たな商圏を獲得したりすることも、将来的に必要になってくる。
コロナ禍にあって思わぬ活況を呈したケンタッキーフライドチキン。日本上陸から50年、株式上場から30年が経ったが、成長ポテンシャルはまだ十分ある。大きなビジョンを描きながら、顧客のニーズに沿った目の前の施策を、1つひとつ積み重ねていくことが求められる。
佐々木 亮祐(ささき りょうすけ)東洋経済 記者
1995年埼玉県生まれ。埼玉県立大宮高校、慶応義塾大学経済学部卒業。卒業論文ではふるさと納税を研究。2018年東洋経済新報社に入社し、編集局報道部記者として外食業界を担当。庶民派の記者を志す。趣味は野球とスピッツ鑑賞。社内の野球部ではキャッチャーを守る。Twitter:@TK_rsasaki