“男の顔は履歴書”などといいますが、それを顔だけでなく身体でも見せつけてくれたのが武田真治さん(47歳)でしょう。アイドルとして一世を風靡した彼が、ときの流れとともに表舞台から降りていき、このまま消えていくのかと思いきや筋肉体操で見事に復活。
そして、22歳年下の歯科衛生士との電撃結婚を発表して、世の中年たちの希望の星となりました。ファッションコーディネーターで自身もモデルとして活躍する中村康介によるこの連載。どん底からはい上がった武田真治さんの変貌を追いながら、男の生きざまとその美学について考えていきましょう。
私たちは年齢を重ねていくたびに人に見せたくない場所が増えていきます。特に加齢とともに代謝は落ちていきますから、脂肪が身体につきやすくなりますね。35歳以上の女性からは、身体のラインが隠れるチュニックワンピースが支持を集めることや、中年男性には、縦ストライプがしっかり入ったスリム効果のあるスーツが好まれることなども、わかる気がします。
若いころはあけすけに見せていた自分のダサい所や弱い所も、年齢とともに人に見せることに抵抗を感じていくものなのかもしれません。
しかし、そんな大きな流れに逆行して、服を一枚ずつ脱いでいくことにより、今まで以上に輝いていく方がいます。武田真治さんです。今回は、武田真治さんのファッションを通じて、大人の生きざまを学んでいきたいと思います。
「フェミ男」の妖艶
武田真治さんは、北海道旭川の高校生だったころに、今やスターへの登竜門である「第2回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリを獲得。中性的なルックスが流行っていた当時、いしだ壱成さんとともにフェミニンな男子を意味する「フェミ男」の代表格でした。
ドラマや映画の出演、CMや雑誌の表紙を飾るなど、その人気ぶりは凄まじく、当時中学生だった筆者も、チビT(小さめのTシャツ)やチョーカーを買い求めて「フェミ男」を目指しました。サックス奏者としても一流の武田さんは、22歳でCDデビューも果たし、23歳ではバラエティー番組『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)にもレギュラー出演。俳優・タレント・サックス奏者として、まさに破竹の勢いでした。
しかし、あまりに多忙な毎日の中で、大きなストレスを感じていた武田さんは、心身の不調を訴え、3年ほどの間、表舞台から姿を消し、一時は芸能界を引退することも考えられたそうです。
普通の人間のメンタルでしたら、そのまま挫折してしまうところ。しかし、武田さんは、ここからが違いました。身体を鍛えていくことで、健全な肉体と健全な精神を取り戻し、見事に復活されました。
2018年のNHK紅白歌合戦にサックス奏者として出演された武田さんは、今までの「フェミ男」とは全く逆のイメージ。均整の取れた筋肉に、男らしい豪快なステージパフォーマンスを披露しました。より男性的という意味で言えば、「フェミ男」に対して、マニッシュ(男性的)な男「マニ男」とでも言うのでしょうか。中性的で、妖艶な魅力を感じさせる「フェミ男」時代よりも、むしろ、ヘルシーでありながら、健全なセクシーを感じさせる「マニ男」。成熟した大人の色気を纏い、男が憧れる男へと進化していったのです。