昔のVTRを見て照れ笑い

 初めてダンプ松本さんにお会いしたのは、日本テレビ系列のバラエティー番組『有吉反省会』のスタジオだった。この番組はその名のとおり、ゲストが公開でいろんな反省をする。

 ダンプさんと長与さんは、「ずっと敵対関係にありましたが、今は仲よしです」と反省しに来られた。はっきりいいはしないものの、ダンプさんは本当はいい人、といった反省しなくてもいい反省も含まれていた。

 平成生まれの若い芸能人たちはぴんと来ないようだったが、同世代の人たちはなんともいえない気持ちになった。やっぱりな、というのはがっかりでもあり、うれしさでもあった。

 過去のVTRが、スタジオに流れる。激しく長与さんを挑発し、リング上で攻め立てるダンプさんにどよめき、やや大仰なパフォーマンスに笑いも起きる。

 ダンプさんが、毛をむしった丸のままの鶏肉を叩きつけ、これは千種だよ、と吠えている場面は、記憶の中にちゃんとあった。

長与ら同期のレスラーたちとトークショー。昔の話で盛り上がる 撮影:森田晃博
長与ら同期のレスラーたちとトークショー。昔の話で盛り上がる 撮影:森田晃博
【写真】おでこに「極」の文字!極悪同盟時代のダンプ松本

 スタジオにいるダンプさんは、あのころは絶対に見せなかった照れ笑いをする。長与さんも笑顔だ。ふたりが仲よしであることに複雑な思いを持つ同世代の女子は、ビューティ・ペアの『かけめぐる青春』を頭の中で流しながら、 VTRにはない回想シーンも見る。

 大きな女子プロレスブームは、2度ばかりあった。2度目のブームを作ったレスラーのほとんどが、1度目のブームのスター選手に憧れてその世界を目指していた。

「いま現在の若手レスラーは諸先輩たちをYouTubeで見て憧れた人が多いです」

 後からライターの伊藤さんに聞かされ、それも時代だなぁとしみじみした。

 ともあれ1度目のブームの立役者は、なんといってもジャッキー佐藤とマキ上田のビューティ・ペアだ。闘う宝塚、当時は必ずそういわれた。

 リングで華麗なコスチュームの人気レスラーが歌い、踊る。客席の女の子たちがカラーテープを投げ、レスラーの名前を叫ぶ。

 ダンプ松本も、ジャッキー佐藤に憧れて女子プロレスの門を叩いた。そのほかにもさまざまな理由、事情があったのは後述するが、とにかくジャッキーさん人気はすさまじかった。

 ビューティ・ペアの前に、マッハ文朱という人気レスラーもいた。整った顔立ちにすらっとした長身、初のアイドル扱いをされたレスラーだ。