斎藤洋介さんが、9月19日に亡くなった。週刊女性2009年11月17日号の連載『忘れられない 母の味』でのインタビュー記事を再掲する(以下、本文は掲載当時のまま)。
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“いい男”だった父に惚れていたんだろうという。食事は1品多く作ってあげ、しかも酒の肴料理ばかり。少年は大人の恋模様を垣間見てしまったーー!?
僕が中学2年生のときでした。電気炊飯器はどこの家庭でも常備された時代なんですけど。うちの母親は炊き込みご飯を作るときだけは、釜を使ってたんです。シメジ、銀杏、鶏肉……。
ある日、母親が炊き込みご飯を作っていまして。釜からご飯を出して、蒸らしているんですけど。ポロポロを涙を流しながら、かき回しているんですよ。
「なに、泣いてんだよ」
そしたら、半べそかきながら、
「焦げちゃったぁ……」
反抗期だったこともあって、
「うっせぇなあ、おめぇ。そんなことぐらいで、ポロポロ泣いてるんじゃねぇ!」
で、バーっと2階に上がっちゃって(半笑い)。
今思うと、かわいそうなことしたなぁ、と思うんですけど。それが、未だに強烈に印象に残ってて。きっと、父親に惚れてたんですねぇ。
お父さんに惚れ込んでいた母
母親は、明治生まれです。
父親より年が上だったんですけど。酔っ払って深夜近くにしか帰ってこないのに、食事の用意をして、ずっと待っているんです。ひどい時には、何時に帰るかわからない父親のために、食事が始まらない時がありましたから。
あれだけ酒を飲んで帰ってきても、家で晩酌をするんです。父親だけ、ちゃんと酒のつまみ用に1品余分に作ってまして。子ども心に、(なんか不公平だな)と。
父親が、ちょっと目を離したスキに、残ってた酒をグッと飲む。いまやっと自分が飲むようになるとわかるんですが。あと残り少ない酒を大事に飲みたいんですね(笑い)。
母親は、僕が盗み酒をしているその姿を見ると、叱るんですよ。「お父さんが、大事に残しているのを……」って。
子どもが喜ぶようなご飯のおかずって、あまり、なかったんですねぇ。小さいころから煮物とか煮魚とか。そんなのがずーっと続くと、さすがにヤになっちゃって。ご飯にソースとかかけて、ご飯だけ食べるときもありました。
今思えば、決して料理の腕がまずかったんではなくて。あまりにも大人の、酒の肴の料理ばっかりが、ご飯のおかずになっちゃうので……。
父親は満足なわけですよ。煮魚を食べちゃった後に、お湯を入れて、スープをとったり。味噌汁も、ナスかなんか入れてあって。ナスの入った味噌汁って、大嫌いなんですよ。なんかスカスカして。でも母親は、
「お父さんが、好きだっていうから」