SNSが「俺のさとみ」と盛り上がったワケ
「表情が豊か」「好奇心旺盛で知識欲が強い」「家族を大切にする」「ポジティブ」──。
確かに、ここだけ並べると就活生が面接での自己PRで繰り出しそうなワードにもみえなくもない。つまり、人が人を好きになるにあたってかなり普遍的な長所である。
かと思えば、いきなり放り込まれる唯一の具体的なエピソードが『テレワーク』だ。このコロナ禍において、この仕事様式はサラリーマンの間でもかなり一般化しているだけに、一気にその“普通の会社員”感が強まる。だからこそ、こう思うのではないか。
「さとみ! 俺だって後輩に指導するとき偉人の名言を引用したりするよ!!」
この『後輩指導エピソード』もある種の“サラリーマンあるある”といってもいいだろう。本屋のビジネス書のコーナーにも『偉人に学ぶ仕事術』みたいな本が大量に積んであることがその証明だ。世の男たちが悔しがるのはそのエピソードが身近であるがゆえなのかもしれない。これがあの石原さとみが《どんな困難も乗り越えると確信しました》と感じた男なのか、と
私は思う。今回、所属事務所が発表した“お相手のプロフィール”は結婚後も男性ファンを惹きつけるためのイメージ戦略の一環ではないか。
本来であれば、いくらスポーツ紙から取材を受けようがお相手についての情報は「一般男性です」だけでもいいはず。わざわざ先述のような人物像と具体的エピソードを公表したのは、世間にお相手は“庶民的な”一般男性というイメージを強調したかったのではないか。ネットでは結婚が報じられた瞬間から「名前を出せないだけで社長や資産家なのでは?」という考察もなされていたし。
そして、「石原さとみは一般的な会社員と結婚した」という印象を与えることに成功すれば、これまで芸能界で誰も座ったことのない人妻ポジションにつくことになる。いわば、“ギリギリ手が届かなかった大物女優”。この刷り込みがあればファンは離れるどころか、さらに目が離せない存在として意識することになるのではないだろうか。「元カノがドラマに出てる」と錯覚しながらテレビにかじりつく猛者もいるかもしれない。それはヤバい奴か。
事実、ネットニュースにはツイッターのトレンドワードに『俺のさとみ』がランクインしたと報じられている(『スポニチ』)。もちろん半分冗談でツイートしたものなのだろうが、取材に対する回答を“精査”した事務所のブランディングに知らずのうちに影響された部分もあるのかもしれない。
……でも気づいたほうがいい。あの大物女優・石原さとみと普通にデートを重ねて1年以内で結婚にまで漕ぎつけられる時点で“一般的”ではない。
〈皿乃まる美・コラムニスト〉