健康番組のテレビ出演を機に、両方の乳房に3つの乳がんが見つかったのは2007年のこと。がんを公表しない芸能人もまだ多かった時代、山田邦子は自らの闘病体験を包み隠さず伝え、同じように乳がんに悩む女性の支えとなってきた。手術から今年で13年。治療からも解放され、完治したといってもおかしくない彼女。しかし、今も「がんとともに生きる」気持ちは変わらないという。(以下、山田さんのコメント)
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還暦を迎えてびっくりしたこと
あれからもう13年。早いものですね。いまはもうホルモン治療も卒業して、年に1度の検診だけとなりました。でも不思議ね。毎日ホルモンの薬を飲むなんてすごくイヤだったのに、いざやめてもいいとなると不安なの。「この薬を飲んでいたから今日まで再発しなかったのに、やめて大丈夫なの?」って心配になってしまうのね。
乳がんは10年再発しなければ、寛解や完治とみなされることもあります。でも私は今も、がんとともに生きている気持ち。10年以上たって再発することもあるし、不安は完全にはなくなりません。
でも今では、乳がん仲間を元気づけるため「私は選ばれたのかな」と思えるようになりました。ピンクリボン運動に参加させていただいたり、がんへの理解を深めるために『スター混声合唱団』を結成したりと、さまざまな活動をしています。それは、私自身がピンクリボンの仲間たちにずいぶん助けられたからなんです。
2度の温存手術と28回にわたる放射線治療がようやく一段落したころ。つらい治療は終わったのに、今度は再発への不安が湧いてきて、落ち込んで……。このままじゃだめだと、精神科に相談にも行きました。そんなとき、ピンクリボンのイベントに呼んでいただいたんです。
行ってみたらびっくり! 乳がんの先輩方が大勢いて、しかも、みんな明るく元気ではつらつとしているの。
「邦子さんいらっしゃーい、仲間ね!」
って言われたとき、うれしかったなぁ。もちろん、人それぞれ思いがあって、全摘手術で乳房を失った方だっているし、自分が女性じゃなくなった気がして、傷ついた方もいる。みんないろんなことがあったはずです。でも、共通しているのは「今、生きている」という気持ちです。
イベントに参加して「ひとりじゃないんだ」って気づいたの。私と同じ思いをしている人がたくさんいる! ということを。治療が終わり、がんだったことを忘れたい人は忘れちゃえばいい。でも、悩んでいる人に「仲間がいるよ」と伝えたい。外に出る気になれない人は、無理に活動に参加しなくてもいい。いまはSNSなどでもつながることができるし、ひとりじゃないと気づくだけでも十分です。
今年、還暦を迎えてびっくりしたことがあります。なんと、放射線治療の影響で13年間まったく生えてこなかったわき毛が、3本だけ生えてくるようになったの(笑)。人間の力ってすごいわよね。
13年たって、私の気持ちも少しずつ変化してきて、近いうち乳房の形成手術にチャレンジしようかなと考えています。というのも、3つもがんを切除したから、左右で乳頭のバランスが少しずれているの。
当時はそんなのどうでもよくて、命さえあればいいと思っていたんだけど。こんなふうに考えられるようになったのは、それだけ元気になった証拠かな。今は、乳房の再建技術も驚くほど進化しています。全摘した人だって、大丈夫。だから、がっかりなんてしないで。
新型コロナウイルスの影響で制限はあるけれど、ピンクリボンはずっとつないでいきたい。オンラインなどさまざまな形で、自分にできることをいつも考えています。