いまはホルモン治療の最中

 主治医の先生への唯一のお願いは「手術後、すぐ歌わせて!」ということ。翌月にライブを控えていたんです。通常の手術では、全身麻酔中、気管に管を挿入します。そのため、のどにわずかに傷がついて、一時的に声が出にくくなることもあるんです。それを避けるため、特別な方法で麻酔をしていただくことになりました。

 左乳房全摘と同時に、再建手術も行うことにしました。これも歌のため。歌手にとって、歌うときの身体のバランスはとても大事なんです。片方の胸を失うことで左右のバランスが崩れることを避けたくて、同時再建を選びました。

 手術は無事に成功しましたが、昨年、再建手術で使われたインプラントにリンパ腫発症の危険性があることが発表されました。報道でも大きく扱われ、インプラントを除去した患者さんもいらっしゃいます。私は先生と相談して「もし何か異常を感じたら、そのときに対処しよう」と決め、そのままにしています。心配な方は、主治医の先生とよくお話しされるのがいいと思います。

 いまはホルモン治療の最中。指のこわばりなど副作用もありますが、元気でライブもやっています。傷口に力が入らないような歌い方に変えてみたら、不思議と前よりものびやかに声が出るようになったんですよ(笑)。

 がんになって思うのは、検診の大切さ。私は空白の10年間に夫や父の病気も相次ぎ、自分のことは後回しにしていました。検診が怖いというみなさんの気持ちもわかります。でも、早期発見が何より大事。安心のため、年に1度の検診を習慣にしてほしい。

 地元・藤沢の女性の健康を守りたくて、元プリンセス・プリンセスの富田京子さんと『ピンクリボンふじさわ』を立ち上げました。今年はNPO法人も発足し、啓発活動をしています。

 今後は、患者さんとご家族を支援する活動もしていきたい。自分の経験が、誰かの役に立つことを願っています。